佑太の気持ちに比べたらあたしの想いなんて きっと星くずにも満たない小さな惑星だよ
佑「明日から夏休みじゃん?」 汀「うん。」 佑「一泊でどっか行かない?」 心「一泊?」 佑「そう!一泊!」 絵「どこに泊まるの?」 佑「海沿いのペンションとかでさ! あ、もちろん男女別ね!」 汀「あたりまえじゃん。絵里子んち平気?」 絵「んー、聞いてみる!」 佑「じゃ、決定ってことで!幹事は俺と心がやるから!」 心「だりぃ。」
きっとその日に佑太は言うだろう。
絵里子に、自分の気持ちを。
夏休みに入って3日後、佑太からメールが来た。
『明日のAM6:00に駅集合! 持ち物は適当に一泊分。水着忘れんなよ!!笑 泊まる場所は、静●県伊○のペンション海人って所(^o^) 寝坊厳禁!!!じゃ、また明日。』
その直後に絵里子からのメール。
『お願いがあるんだ! 明日海で泳ぐとき、あたしハルと2人でいたいの。 協力してくれる?』
何て送ろうか迷った。 でも、言ってしまったから。
もう好きじゃないよ!
『OK☆ 頑張ってね!』
心がチクチクと痛んだ。 でもしょうがない。 あたしは好きじゃないんだから。
翌日、変なアロハシャツを着た佑太と 黒のポロシャツにダボパンを履いた心と 花柄のワンピースに身を包んだ絵里子が駅にいた。 あたしはタンクトップにハーパンという なんとも不抜けた格好をしていた。
佑「っしゃ!行くか!」 絵「楽しみ〜!」 心「暑すぎんだよ、この野郎・・・〈怒〉」 汀「・・・。」
可愛かった。絵里子は。 長い髪をなびかせて麦わら帽子を手で押さえる。 なんだかあたしはバカみたいで その場にいるのもいやだった。
早朝な上にこっち方面の電車に乗る人は少なかったため あたし達が乗った車両には人が居なかった。 あたしは席を離れると、絵里子と佑太から遠い席に座って外を眺めた。
あたしはこのままずっと 絵里子と佑太が付き合っても キスしたとか、そういうことを報告されても この気持ちを押し殺して生きて行くんだろう。 でも、佑太に想いを伝えるよりは 遙かに簡単なことなんだけど。
心「なーに一人でぼーっとしてんだよ。」 汀「心・・・。」 心「辛いだろ。」 汀「・・・」 心「痛いだろ。」 汀「・・・」 心「我慢しなくていいんだぜ。」
その言葉を聞いたらなんだか無性に泣きたくなって あたしはその場で声を殺して泣いた。 心が頭をなでてくれた。
なんて優しい手なんだろ
佑「着いたぁぁ〜!!」 絵「すごーい!」
前には海が一面に広がっていて 水平線がやけに眩しかった。
佑「泳ぐべ!!」 心「早いな!」 絵「いいじゃん!泳ごう!」
昨日絵里子に言われたことを思いだした。
汀「あたし、ペンションに荷物置いてくる。 心も手伝って!」 心「・・・」 佑「んなのあとでいいじゃんよ!」 汀「あー、あたしチョコ入ってるから溶けたら困るし!」 心「すぐ戻るよ。」 佑「ちぇっ。」 汀「心、行こう。」
ペンションに着くと二つの部屋に案内されて 絵里子とあたしの荷物を右の部屋に置き 心は左側に入って荷物を運んだ。
心「絵里子に言われたんだろ。」 汀「へ?何を?」 心「しらばっくれんなよ。2人にしてとか言われたんだろ。」 汀「・・・心は何でも分かっちゃうんだね。」 心「お前のツラ見れば分かるよ。どーすんの?」
窓からは楽しそうに笑う絵里子と佑太が見えた。
汀「もうちっとここにいるよ。心行っていーよ。」 心「ばかやろ。俺が行ってどーすんだ。」 汀「ありがとさん。」
あたしはクーラーの効いた部屋にいて 佑太は真夏の太陽の下で好きな人と笑い合う。
何も言えない。
もう、動けない。
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