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片恋 sadness  作者:比呂

最終回   最終章
二度と会うことはないと思っていた。




「汀・・・。」
「佑太・・・ひ・・さしぶりだね?」
「うん。帰り?」
「そう。あんたも?」
「俺は今から約束あんの。」

佑太は違う方を見て話していた。

「絵里子と?」
「え、うんまぁ。」
「幸せそうだね!」
「え・・・」
「あー幸せ!って顔してる!」
「お前こそ、心どうなんだよ。」

痛いとこ突かれた。

「心は、優しくてすごく好きだよ。」
「うん。」
「だけど・・・」
「ん?」
「・・・・んーん!なんでもない!」
「そ?あ、電車来た。」
「あたし2番線だ。」
「俺3番線。」
「じゃあバイバイだ。」
「うん。」

最後かもしんないから
聞いておこうと思った。

でもやっぱりやめておけば良かったかな。

「佑太。あの日あんたは何を想って空を見上げたの?」

佑太の顔が一瞬険しくなって、また和らいだ。


「失敗したな、って。」
「え・・・?」

電車に乗りかけた裕太がホームに立った。
オレンジの電車は駅長さんのアナウンスと共に3番線から姿を消した。


「なんで、乗らないの。」

「乗ったらまた動けなくなる。
 どこにも未来なんて見えなくなる。
少し間を空けてまた佑太が喋る。
「高一の時川に行ったの、覚えてる?」
「うん、覚えてるよ。」
「その時俺は絵里子が好きだった。」
「知ってるよ。」

「・・だけど知らないだろ?
 どんだけ俺がお前に救われてたか
 知らなかっただろ?!」


胸が太鼓を叩くみたいに騒いだ。


「だけど、俺は絵里子の隣にいつもいたお前を
 よく見てしまうようになって
 気付いたんだ。

 これが恋かって。
 でも伊豆に行った日、俺は思った。

 片思いってこんななんだって。すっげぇ辛いのかって。
 もうそれからはやけくその日々だったよ。
 お前と喋るのも苦しかった。
 そんであの日、お前が屋上に来て俺と付き合いたかったって言った。
 冗談だって事も分かってた。だけどかわせなかった。
 どうしたらいいのか全く分かんなくて、上を見た。
 ただそんだけだ。」


体が動かなくなってしまった。

だって
今やっと分かったから。
裕太の想いが、今になってやっと分かったから。

気づけなくて ごめんね。


「ねぇ、あたしどうしたらいい?

 今、目の前にいるあんたを抱きしめたくてたまらない。
 どうしたらいい?」




出会った頃よりも、はるかに大きくなった腕に抱きしめられて
あたしはとうとう泣いてしまったよ。


見慣れた風景の中で、子供の頃出会ったあたし達は
あの頃と比べられないくらいに大きく、そして慎重になっていた。


でも少しも変わらない君を

今見つけられたから。




切なくても祈りつづけたあたしの片恋は
ずっとずっと続いてる。


いまもあの日も これからもずっと。





                         FIN

  

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Novel Editor by BS CGI Rental
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