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君を忘れた瞬間から 作者:比呂

第3回   秘め事
美砂が妙にそわそわしているのには気が付いていた。





「帰ろう。」
「あ、ごめん。今日用事が・・・。」
「・・・そう。じゃあまた明日ね。」
「うんごめんね。」

すまなそうに謝って美砂はどこかに消えていった。
僕は少し気になってしまった。




もう外は暗くなっていて、それでも席を動こうとしない。
窓の外からずっと美砂を見ていた。
こんな事をするのは心底いやだったけど気になり始めると
徹底的に調べないと気が済まないタチだったのでしょうがなく座り込んだ。
すると中から声が聞こえてきた。


「御門君。」

ん?智哉か?なんだ、智哉を待っていたのか。

って、何であいつ?


「部活、お疲れ。」
「うん。」
「何の話し?」
「単刀直入に言うよ。君が好きだ。」


えぇっ?!いきなりかよ・・びびった。
ドキドキした。
でもどこかでムカついていた。
僕の彼女なのに。

「えっと・・・。」

美砂は困っていた。

多分・・・。


下を向く美砂を智哉が抱きしめた。
爆発しそうな気持ちを鎮めることが出来なかった。
ヤバイと思ったときにはもう、教室に駆けていって智哉を殴った後だった。

「何してんだよ!」
「侑!」
「だって、お前ら付き合ってないんだろ?」
「は?」
「言ってたじゃねぇか、早瀬のこと。どうでもよさそうに。」
「どうでもいいなんか思ってねぇよ!」
「少なくとも俺にはそう見えたんだからそう思わせたてめぇが悪いんだよ!」
「ちょっとやめてよ!」
「おい、早瀬。どっちにする?」
「何言ってんだよ。」
「俺と侑。どっちがいい?」

美砂を見た。
下を向いて黙っている。

「おい、美砂?」
「分からない。分からないよ侑。」

涙を瞳いっぱいに溜めて僕を見て美砂は走り出した。
教室には、座り込んだ智哉と僕が残った。


「侑。これは駆け引きだ。俺は引くつもりはねぇよ。」
さっと立ち上がって、智哉も教室を出ていった。


何が起こったのか分からない。


でもあの時の美砂の涙を


僕は今も忘れられない。







 

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Novel Editor by BS CGI Rental
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