いつしか僕らは恋人と呼ばれるようになった。
夏休みが過ぎ僕らは受験に向かってただひたすら勉強し続ける日々を送っていた。
急に仲良くなった早瀬美砂はやっぱりまだ文句を言っており どうして勉強なんか・・・とか、大人ってやっぱりよく分かんないな・・・などとボヤいていた。 決まって僕が言うのは 「僕も同じ考えだよ。」だった。
学校で親友とも呼べる御門智哉とお昼を食べていた金曜の午後、変な噂を耳にした。
「おい侑、お前ほんとなのか?」 「何が?」 「早瀬と付き合ってんだろ。」 「え?何で?」 「どう見たって付き合ってるように見えるよ、あれは。」 「ならそれでいいんじゃない?」 「どうでもいいって感じだな。」 「や、そういうわけじゃないけど。」 「早瀬、かわいいよな。」
少しドキっとした。
「うん。可愛いんじゃない?」 「美砂とか呼んでんのか?」 「え、まぁ。」 「いいなぁ。」 「好きなのか?」 「べつに。」 「ふぅん。」
そんな会話が続いた。 誰が見ても彼女はやっぱり可愛いし、智哉が好きになっても別に差し障りはなかった。 だけど少し不愉快だった。
6校時目が終わり、いつも通りに彼女が迎えに来た。 「侑帰ろう。」 「うん。」
手なんてもちろん繋がなかったけど30センチ横に美砂がいる。 目線は下だった。
「ねぇ侑。あたし達ってさ、付き合ってるのかな。」 「さぁ。」 「いっつも友達に聞かれるんだよね。どう答えたらいいのか分かんなくて。」 「僕も今日聞かれた。」 「何て言えばいいの?」
そう聞かれても・・・と言うと美砂は言った。
「じゃあ付き合ってるって言うよ?」 「・・・」 「あたし侑好きだし。」 「あ、そう。」 「なんだなんだ!告白してあげたんだから返事位しろ!」
流れ・・・というべきなのだろうか。 自然に口が動いた。
「僕も。」 美砂は下を向いて黙ったまま頷いた。
さっきの訂正。
流れじゃないよ。ほんとの気持ちだよ。
手を繋いだ。
自分と同じ体温のその手は何だかすごく心地よかった。
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