7年は
短すぎたのかもしれない
あれから数日経っても、あたし達は変わらなかった。 だけど京夏がけんちゃんといるときは、見計らってその場を離れた。
何も知らない京夏は、きっと気を遣ってるんだろうと思うだろう。
だけど、当のあたしは「京夏のため」じゃなかった。
「自分のため」だった
きっともうこの時から あたしの一番は京夏じゃなかった。
優しくなれなくて ごめんね
そして夏が勢いを増した頃
全てが 崩れた
夏休みが近づいて、京夏はウキウキしていた。
休みの間、けんちゃんと遊びに行くらしい。
幸せそうな京夏を見て、苛立つことが多くなった。
「ねー、夏休み健悟と海に行くつもりなんだけど、今日水着一緒に選んでくれない?」
「ごめん、今日は用事がある。」
「えーなんでー?」
「何でって・・無理なもんは無理なの。」
「里沙のケチ!」
この言葉に腹が立つなんて あたしもちっちゃくなったもんだ
「ケチってなに? 意味分かんないし、最近京夏浮かれすぎだよ。」
席を立ったのはあたしだった。
京夏に対して、すまないという気持ちばかりで それでもごめんの一言が出ない自分が悔しかった。
抑えきれないけど吐き出せもしないこの気持ちを 聞いてくれるのは屋上に浮かぶ空だけだった。
「どうしよう。あたし、最低だよ。」
金網に手をかけて、上を向くと涙が出てきそうになった。
すると後ろから声がした。
「里沙。」
ビックリして振り向くとけんちゃんがいた。
笑っているのか笑っていないのか、分からないといった表情で ゆっくりとこちらに向かって歩き出した。
「最近、喋ってなかったね。」
優しくけんちゃんが言う。
「そうだね。」
「俺さ、京夏が好きなんだよ。」
網にもたれてけんちゃんが言った。
「うん。分かってるよ。」
分かってる。
けんちゃんの気持ちはちゃんと。
「だけど、一番は京夏じゃない。
お前だよ。」
けんちゃんがあたしの方を向く。
「里沙。好きだよ。」
きっとこの言葉は、神さまでも予想できなかったに違いない。
何も言えなかった。
ただ黙り込んで、京夏の笑顔だけがシンクロしていた。
そして、あたしは自分の運命をひどく恨んだ
「何、してるの?」
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