つまんない間違いをして
二度と戻らないあの頃を思い出して
こんな時、本当に過去に帰りたいと思う
次の日はいつも通りだった。 何も変わらない毎日が待っていた。 京夏は笑っているし、あたしも笑う。
このまま時が過ぎていけば 昨日のあたしとけんちゃんも永遠に封じられる。
そう、思っていた。
「里沙、話があるんだけど。」
頬を多少赤らめた京夏が改まって言った。
「あたしね、健悟と付き合うことになった。」
そんなことはもう知っていたし、今さら驚くこともなかったんだけど
「良かったねー!!いつ付き合ったの?!」
「昨日かな・・。健吾が付き合おうって言ってくれたんだ。」
ふいに、あの言葉が蘇る。
里沙 好きだよ
「うん。あたしも。」
「どしたの?里沙。」
「ん?あ、なんでもない。 それより、これからはあたし別々に帰るね!」
「え?なんで・・」
「ラブラブなカップル邪魔するわけにはいかないでしょー!」
「そんな・・」
「いいのいいの!あ!ほら、次教室移動だよ!」
「あ、うん。」
意味が分かんない物理の授業を聞き流して あたしはずっと窓の外に浮かぶ青い空を見ていた。
けんちゃんの笑った顔と泣いた顔が、同時に頭の中を駆けめぐる。
忘れなきゃいけないのに なかったことにしなきゃいけないのに
どうしてこうも、諦めが悪いんだろう。 自分で自分が嫌になるよ。
1日は短かった。
登校したと思えば、すぐ下校の時間になる。
あれからけんちゃんはあたし達のクラスに来なくなった。 代わりに、授業の間の10分休み、京夏はどこかへ消える。 きっとけんちゃんの教室へ行っているのだろう。
その間、あたしはどうしようもない想像を膨らませてむしゃくしゃする。
ほんとに、バカだよなぁ
帰り際、京夏とけんちゃんに会った。
「あ、里沙。」
けんちゃんが慌ててこちらを向く。 笑えないのに、口が笑う。
「じゃあまた明日。」
二人を通り過ぎる。 泣きそうになるのを堪えて、あたしが階段を降りようとしたときけんちゃんが呼んだ。
「里沙!」
愛しいその声で、あたしの名前を呼ぶ。
笑って振り返る。
「何?」
「一緒に帰んないのか?」
「・・あたし、邪魔じゃん!」
けんちゃんの顔が歪む。 あたしの笑顔も歪む。
「邪魔なんて思ってねぇよ!」
優しいね、けんちゃんは。
でももう、甘えることもできない。
「お似合いだよ!京夏とけんちゃん!」
言いたかったことは、こんな事じゃなかった。
すぐにでも、けんちゃんと一緒に逃げたかった。
でもそんな事をしたら、一生神さまにも幻滅されるんじゃないかって。
大事な人も、失ってしまうんじゃないかって。
それが怖くて、何もできない。
あれから7年経った今でも、あの頃のことは忘れられない
あの日、どんなに辛くてもけんちゃんを諦めようって決めた
夢の中で笑う
里沙と小さく呼ぶその声が
消えてくれるのを 静かに待った
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