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彼がいた頃 作者:比呂

第12回   第十一話
雨だったから







どこか記憶に残るんだろう
























朝から長雨がしとしとと降り続いていた。

あたしは落ち着かない髪を束ねて学校へ向い、いつもと同じように過ごしていた。




「おはよう、里沙。」

「おはよう。今日雨だからマラソンないね。」

「うん、やったねー。」


京夏と話をしていても
けんちゃんとのことが頭から離れなかった。







ホームルームが終わって、あたしは透明のビニール傘をさして昇降口を出た。




どうして透けた色なんかにしたんだろう。


布傘だったら 気づかなかったかもしれないのに。
















門を出て右に曲がる。



駅に向かう途中に大きな十字路があって
そこでいつも引っかかる。





赤が長くて有名な信号が青になるのを待った。






ふと顔を上げると 目の前に1つの傘を二人でさしている京夏とけんちゃんがいた。











何もかもが とんだ












仲良く 喋りながら 手を繋ぐ二人





























傘をさしていた手はいつのまにか力が抜け

雨に濡れた

















涙と雨が一緒になって分からなくなった














「里沙・・・!」



けんちゃんがあたしに気づいた






あたしはもう何が何だか分からなくて



無性にそこから逃げたくなって







まだ赤だった信号を走った












「里沙っ!!」









けんちゃんが後ろから追ってくる気配を感じた















あたしの手を引っ張り






走っていた車にぶつかったのは

















けんちゃんだった















 

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Novel Editor by BS CGI Rental
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