俺は本当の気持ちとか
欲しいと思うものとか
絶対に言わない性格で
だけど
初めて欲しいと思った。
たとえ
大切で大切で
仕方のない旧友を
失っても
翔平が佳代を好き? ありえないと思っていた。 そんな事絶対にないと思っていた。
だけど 俺の心は落ち着かない。
あの日、帰り道で翔平が佳代を好きだと言った。 俺は一瞬時が止まったように口が開かなかった。
家に帰って少し考えてみた。
このざわつく気持ちを
「 恋 」と 呼ぶのだろうか。
俺が 佳代を?
絶対ない! ありえるわけない!
好きになるはずがないだろう
そう 思いたかった。
思いたかっただけなんだ。
次の日、佳代は普通で翔平もいつもと変わらなかった。 俺だけはしゃいでバカみたいだな。
「佳代、今日重そうだな。」 「ああ、美術で油絵やんだー!家にある木の板持ってきてってさ。」 「持とうか?」 「ありがとー。」
なんだか急に仲良くなっていた。
むしゃくしゃした。
「広、今日話がある。」
佳代に突然告げられて、そのときの表情は何とも口では表現できないような
とても 難しい顔だった。
失って
気付いて
そうやって僕等は
大人になってゆくんだろう
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