何かを失う痛みをあたしは味わったことがなく
だけど大切なものを失くしてまで
何かを欲しいなんて
きっと思わないだろう
静がいなくなって4人での生活にも慣れ始めてきた冬の始まりに あたしは同じクラスの水澤君という人に告白をされた。 話したことは数回ある程度で、別に親しいわけでもなかったけど その人が本気であたしを想ってくれているのに 何でか分からないけれど、胸が熱くなっていくのを感じた。
「入学したときから気になってて、その、付き合ってくれませんか?」 「えっと、あの・・・。」 「返事はまた今度でいいんだ!」 「あ、うん。」 「いい答えを待ってる。」
水澤君は走って校舎に戻った。
ホームルームが終わって広と翔平のクラスに行った。
「帰ろう。」 「おう。」 「・・・。」 「広どしたの?」 「何かさっきからあんな感じでよ。」 「なにかあったかな?」 「わかんね。てか佳代お前さぁ!同じクラスの水澤に告白されただろ!!」 「ちょっ!何で知ってんのー?!」 「晃情報☆昼休み校庭裏にいたの見たって!あそこ、渡り廊下から丸見えなんだぜ?」 「うっそー!!(汗)」 「・・・・何て答えたの?」 「まだ返事してないけど。」
「やめとけよ。」
「え?」 「水澤なんかやめとけ。どんな奴か分かんないだろ。」 「いい人だよー?」 「違う違う。広はイヤなんだよな♪佳代が誰かと付き合うのが。」 「えー?ないよねぇ!」
「そうだって言ったら佳代はどうすんの?」
広の真剣な目にあたしは釘付けになってしまった。 離れられなくなって、いつしか広が目線をそらしていた。
「冗談やめてよー。」 「・・・ごめん。」 「広、ちょっと来い。」
翔平が広を呼んで何かを話している間、あたしは何が起こったのか分からず混乱していた。
その時気づき始めた、広の想い。
そして あたしの気持ち。
ねえ
あなたを失くすくらいなら
もう欲しいなんて思わない
あなたの笑顔が消えるとき
それはあたしにとって
絶望と呼ぶの
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