俺の幼なじみの広は、何もしなくても格好いい。 目立ったつもりはなくても目立つ。
要するにビジュアルがいい。
なのに好きな女などいなく、つまんない生活を送っている。
と、俺は思う。
「広。お前今日も告白されたってな。」 帰り道にさりげなく聞いた。 「ああ。あーいうのめんどくさいっていうかやめて欲しいんだよね。」 「は?何で。嬉しいじゃん。」 「いちいち呼び出してさぁ。ここで言えばいいじゃんね。」 「・・・お前、オトメゴコロってゆうのを分からなさすぎだよ、それ。」 「分かんなくてもいいよ。」 「まぁお前には許嫁がいるもんなぁ。」 「は?何言ってんのさ。」 「佳代だよ。」 「またそれか。」 「佳代は違うってば!」 「意識しなくていいよ。」 「もー話になんないよ。」 「はは。てか静来週だな。」 「うん。寂しいな。一人減ると。」 「ああ、晃はどうするのかな。」 「何もできないんじゃないか。晃だってあいつなりにけじめつけるだろ。」 「そうだけど。」 「とにかく、俺達は干渉しないで見守るんだ。変なこと吹き込むなよ、翔平。」 「分かってるよ。じゃあなー。」 「うん。」
広は割り切りいいな。 俺は晃がそんな簡単にけじめつけられるとは思わないけどな。
だってもう10年間以上片思いしてるんだぞ? ま、広には分かんないだろうけどさ。
夕ご飯を食べた後、俺は佳代の家に行った。
「おす。上がっていい?」 「翔平。どしたの?上がってー。」 「ちょっとな。おじゃま。」
佳代の部屋はO型に見えないくらいにキレイに整っている。 性格はおおざっぱなのに。
「実はちょっと聞きたいことがあって。」 「なに?」 「お前、好きな奴とかいる?」 「へ?好きな人?いないよー!」 「そっか。じゃあ単刀直入に言っていい?」 「うん。」
「お前、広見てて何も思わない?」 「広?」 「そう。」 「何で広?」 「いやーなんとなく。」 「別にー何とも思わないかな。良き友達って感じ!」 「はぁーやっぱそうか。」 「何か企んでるな〜?広だって何も思ってないと思うよー?」 「いや、ごめんな!急に。じゃ俺帰るわ!」 「うん、また明日!」
帰り道(といっても20mぐらいしか離れてない。)俺は考えた。
二人とも気付いていないのではないか。
少なくとも広は自分の気持ちを押さえ込んでるって感じだし 佳代はぼーっとしてっからなぁ。
ガキの頃からあの二人すげぇ仲良かったし そーいう気持ちあってもおかしくねぇのになぁ。
思えば、佳代が海で溺れたとき、確か小学5年の時だ。 一番焦って海に飛び出したのは広だった。
絶対好きなはずなのに。
上手くいかないなぁ。
俺はね
思うんだ
確かな友情なんて
そんな薄っぺらい物じゃなく
心から安心できる
そんな場所でありたい
俺は
いつも
そう思ってる
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