放任だけど暖かい。
16年間、のんびり屋の父と優しい母と可愛い妹に囲まれて生きてきた。
だけど 旅立たなくてはいけない時が必ず来るんだと思った。
「お母さん、お父さん。話があるの。」 「どうしたのー?」 「真剣だな。」 「うん。よく、聞いてね。」
お父さんとお母さんはキョトンとした顔つきだった。
「あたし、高校中退して、大検資格取って東京の専門大学に行きたいの。」
「えっ?」 「学校の先生には、結構前から相談してて分かって貰った。 でも、お母さん達が賛成してくれないならあたしは行かない。」
強い語調で言った。 それからお母さん達は少し悩んで、優しく言った。
「静が行きたいなら行けばいい。夢があるんでしょう? 母さん達は応援するわ。」
お父さんも笑って頷いた。
ああ、なんて素晴らしい家族に恵まれたんだろう。
「ありがとう!あたし、弱気になって、帰ってきたりしないから!」 「何言ってるの。ここはあなたのお家ですよ。」
とうとう堪えていた涙が溢れてしまった。
「いつだって帰ってらっしゃい。 苦しくなったら、辛くなったら、ここにはいっぱいいるじゃない。
素敵な人達が、ここにはたくさんいるでしょう。」
お母さん
お父さん
裕加
佳代
広
翔平
晃
そうだったね。
大好きでたまらない人達が
この街にはたくさんいる。
「うん。ありがとう・・・。」
もう寝なさいと、お父さんが背中を押した。 “頑張れ”と言われた気がした。
次の日、あたしにはまだ課題が残っていた。
佳代達に解ってもらうこと。
「みんな、話がある。」 「どした?」 「何だよ急に改まって。」
「あたし、東京に行くの。」
「は?」 「えっ?!」
「大検の資格取って、看護の大学に行きたいの。 知識が豊富な東京で勉強したい。」
沈黙があった。
それを破ったのは晃だった。
「それは、東京じゃなきゃだめなんだな?」 「・・・うん。」 「じゃあ行って来いよ。」
「えっ・・・。」
「うん、そうだね。静がこんなに行きたいなら行けばいいよ。 あたし達は静の夢が叶うことを祈るから。」
「なるべく早く帰って来いよ。」
「手紙書けよ。」
なんて優しいんだろう。
なんてあったかいんだろう。
あたしは、本当に幸せだ。
「ありがとう。ありがとう。」
「頑張れよ。」 「うん。」 「いつ発つの?」 「来月。」 「そっか。じゃあそれまでいっぱい遊ばないとな!!」 「うん!」
あたしは
この人達を離れて
ちゃんと笑えるだろうか。
一人で生きて行けるだろうか。
不安だけど
今は
こうして傍にいたい。
最上級の友達の傍に。
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