人生とは 何が起きるか分からないもので・・・
「再発です。」
病院の帰り道、勝太と泉に会った。
「未来!」
声をかけられてあたしはどう反応していいのか分からなかった。
「ああ、どうしたん?」
「映画見てたんだ。飯島と二人でなぁ。」
ヒソヒソ声で泉が顔を赤らめて言った。
「・・・良かったね。頑張ってや!じゃあ。」
すごく、小さな微笑みだったと思う。
「え?一緒に帰ろうよ!」
「ううん。ちょっと考え事して帰るから・・。」
「うん。分かった。」
あたしは一人で駅の方向に向かった。 その時、後ろの方であたしの名前を大声で叫んだ。
「未来っ!お前、どこ行っとったん?」
言うか言わないか迷った。 でも、言わないのは礼儀知らずだと思った。
「病院!」
その日の夜遅く一本の電話がかかってきた。 「もしもし、大山です。」
「飯島ですけど、、、」 こもり気味な電話口の勝太の声は3年前と変わらなかった。 「・・・どうしたん?」 あたしが訊いた。
「お前、今日病院行ったって言ってたやろ。」 「うん。」 「もしかして・・・あん時の?」
長い沈黙がそこにはあった。
身が裂けるような思いがした。
このまま言ってしまって良いのだろうか。 勝太に心配かけていいのだろうか。
でもやっぱり、勝太はあたしのものじゃないし 泉のこともあった。
言ったって、何も変わりはしない。
昔のあたしたちがただここにいるだけだ。
「再発やって。」
電話から小さなため息が聞こえた。
「じゃ、切るね。」
「待って。今日何で俺と沢本に言わんかった? 電話してこなければ、ずっと言わないでおくつもりだったか?」
涙をこらえて言った。
「言って何が変わるの?あんたはあたしに同情して 好きでもないのに好きだと言う。 もう、諦め時やねんな?」
「・・・・・意味わかんねぇよ・・・」
あたしは答えないでそのまま電話を切った。 もう何も考えないで今日は寝ることにした。 お母さん達に言うのも忘れてしまっていた。
夏休みは終わりに近付いていて あの日から誰とも遊ぶ気にはなれなかったし 宿題の山があたしを襲った。
9月1日
朝起きて学校に向かう。 その途中で泉に会った。
「おはよ!未来。」 「うん。おはよ!」 何も知らない泉に合わせる顔は見つからなかった。
後ろに勝太がいることは何となく気がついていたんだけど・・・
|
|