前兆はいつも突然でした
夏休みが終わりに近づいて そろそろ、宿題を始めないとヤバイかなと思い始めた頃 急にその時はやって来た。
部屋が思ったよりも散らかってしまったので 片づけをしようとベッドから立ち上がった瞬間 何かが音を立てて崩れた
心の中の何かが砕けていくのを感じた
ふいだった。
目の前が真っ白になって、立てなくなるのと同時に あたしの足は言うことを聞かない。
ドサッ
ベッドに頭だけを置いて 倒れ込んだ。
一瞬、何が起きたのか分からないほど 突然の出来事だった。
ふっと、あの時のことが蘇る。
2001年7月
家の前の道路であたしは倒れていた。 意識は無かったと思う。
勝太がこっちに向かって駆けてきた。
「未来!未来!」って何度もあたしを呼ぶの。
でもあたしは答えなかった。
勝太の大きな声であたしのお母が出てきた。
そして病院行き。
集中治療室。
手術中の赤いランプ。
それは、あたし自身が見た景色ではなかった。
意識が戻ると、あたしは部屋のベッドに倒れていて 涙は流れていなかった。 胸に手を当てて生きていることを確かめた。
心臓の病気だった。 もう、隠してなんておけなかったんだ。
3年前のあの日、あたしは倒れた。 病院で2ヵ月ほど入院して手術も何とか乗り越えた。 でもあたし、病名は何ですか?って医者に聞いたとき、生きた心地しなかったよ。 あたしの運命が下されるのを待った。
「心房隔欠損症(A・S・D)」
あたしの年頃によく見られる病気だそうだ。 いわゆる、心臓病で重症の場合は早期手術が必要になる。 でもあたしは軽度だった。 運動の制限もなかったし、少しの入院で「心房中隔欠損症」はあたしの中から姿を消した。
と思っていた。
今日までは。
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