昔のことは もう忘れかけていた
あたし達が行く海はあまり人が多くない穴場で それでも夏真っ盛りなワケなので、ビキニ姿の姉ちゃんもやっぱり元気だった。
「今年、少し多いか?」 「だね。」 「どこら辺にする?」 「近い方がラクやな。」 「じゃあ、ココでいいか。」 「うん。」
男子達が見栄を張ってパラソルをつくってくれた。 その間、女子はジュースや菓子の買い出しだの、水着に着替えるだの まぁいろいろとやることはあった。
30分ぐらいしたらみんな、体操をして海に散らばっていった。 暑いのが嫌いな勝太は「オレ、いいや。」といってパラソルの下にいた。 泉はあたしに 「どうしよー・・。誘うのハズいしな〜・・・。何とかならん?」 って相談持ちかけてきた。 「じゃあ、、あたし聞いてみようか?」 と困った風に言ってみた。 すると、泉は笑顔になって 「ありがと!」 なんて、カワイイ顔してお礼を言う。 この笑顔には勝てっこない。
「勝太ー、ちょっとでもいいから泳ごうよ」
「むり。」
「じゃあ聞いてよ。耳貸して。」
−ごにょごにょ−
「沢本がぁ?オレを?」 「声でかいって。ま、そういうワケだからいってやってよ。」
「・・・う゛〜、わ、かった・・・。」
「よし!いっといで!」
鼻で小さなため息をつくと勝太はTシャツと半ズボンを脱ぎ捨てて浜辺へ走った。 3年前とは大きく変わっていた勝太の背中はやけに大人っぽく見えた。
海が赤く染まって、夕方になった。
「もう、帰ろうか。」 「そうだね。」 「また遊ぼうよ!」 「オッケー!じゃあ連絡はダサく、連絡網順ってコトで。」 「おーし、じゃあ片づけっかぁ。」
帰り道、勝太は泉と仲良くおしゃべりしていた。
あたしも何となく笑顔になって楽しかった。
バスは確実にあたしをあの日から遠ざけていた。
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