■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

隣の家の勝太くん。 作者:比呂

第3回   傷心
ずっと言えない想いがあった


届かなくても育ち続けるキモチがあった



きっと一生伝えられない願いがあった










夏休みに突入して早1週間。
あの話を気にかけたまま時間が過ぎていった。
部活が休みだった午後、泉から電話がかかってきた。


「未来?支度済んだん?あさってやけど。」
「何のこと?」
「海いくって言ってたやん!」
「えっ?」
「とにかくあさってだからね。ほな。」
軽くため息を付いて「どうにでもなれ作戦」に出ることにした。


翌日の夜。
何も考えないで外に出た。
夏の星空は眩しいほどキレイで、いつかの鮮明には思い出せないあの日を見ていた。
すると近くで別のドアの音がした。
予感はしていた。
部活から帰ると、時々壁にもたれかかって空を見ている勝太を目撃していたからだ。
家に戻ろうとしたけれど、呼び止められた。一歩遅かった。




「何しとんの?」

「・・・別に。」

「・・んはぁ〜!空がキレイや!」

伸びながら笑顔でそう言う勝太だった。
前と変わらない、はにかむような笑い方はなぜかあたしをほっとさせた。

「くさいなぁ・・・。」

「ほっとけ。」

大きな安堵と心地よさが胸に痛い。

「そういや、喋ったの久しぶりやな〜。」

「・・・うん、らしいね。」



「元気になって良かった。」







その言葉を聞いたとき、もうあたし確信してた。
コイツ好きやな〜って。
でも、もうそれが本当の記憶かどうか判断が付かなかった。





「もう3年以上も経つなぁ。」









勝太はそれ以上何も言わなかった。
ただ、うんって頷いた。



「明日の支度済んだ?」
「まだ。」
「じゃあ入ろっか。」
「・・・おやすみほいほ〜い」







次の日は晴天で、絶好の海日和だった。




待ち合わせのバス停に行くともうみんな来ていて

「遅いで〜、未来!」
って困ったような笑顔で泉は言う。



胸の奥で昨日の夜が焼き付いて離れなくて








泉の顔はまともに見れなかった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections