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忘れられない人がいます 作者:比呂

第9回   手紙
次の日の朝、寒くて布団から出られなかった。




学校はいつも通りで
でも、五月の席だけが空いていて僕は斜め後ろを見ることが出来なかった。


たまにクセで見てしまう。
だけどそれが何になっただろう。
ただ、五月が居ないことを確かめただけだ。




4限目が終わって、給食が終わって
誰も五月の話をしなかった。



このまま忘れていくのかな

無かったことにするのかな


教室はワイワイしていたけど
どこか寂しげだった。









宏海「櫂、ちょっと来てよ。」

櫂「ん?何?」

夏樹「いいから、校庭行くぞ!」

櫂「なんだよ、急に〜。」




校庭へ引っぱり出された。
何だろうと思った。

すると夏樹がホラっと言い、土にまみれたビニール袋を見せてきた。


それは1年前、中学2年生の秋に僕ら4人が埋めた物だった。
1年後の自分に手紙を書こうって。


4枚の封筒。



一年前の記憶。





























宏海「なに?」

五月「だから、一年後の自分に手紙書こうよ〜!!」

櫂「別に良いけど。」

宏海「じゃあ今日家に帰って書くってのは?」

夏樹「おっけぇ!」

五月「忘れたら1年後、みんなの前で読むのね!」

櫂「え〜なんだそれー!!」

夏樹「いいじゃんいいじゃん!楽しいじゃん!!」

櫂「俺ぜってー忘れねーからなぁ。」

五月「私だって忘れないよ。」

宏海「五月は忘れ物大魔王だから無理なんじゃない?」

五月「そんなことないもーん。」




次の日、やっぱり忘れたのは五月だった。

五月「わ・・・忘れた。」

櫂「一年後が楽しみですなぁ。」

宏海「ですねぇ〜。」

夏樹「だなぁ。」


五月「うわぁぁぁぁぁーーー泣」






























夏樹「五月の読んでみる?」

櫂「いいよ。」

夏樹「あいつが忘れたんだっけね。」

宏海「泣いてたね。」

櫂「うん。」


夏樹「じゃあ俺が代表して!」




『一年後の五月へ。
 まず最初に願うことは身長が伸びてること!
 148cmはキツい・・・涙
 
 あと、かっちゃんと宏海と夏樹と、もっともっと仲良くなってること。
 それだけかなぁ。
 

 すっごい願い事になっちゃうけど
 かっちゃんと結婚できたら良いな。
 10年後位に!
 ムリだろうけど・・・。。
 仲良しだったらそれでいい。
 うん、それだけでいいや!
 
 あとは長生きすること。
 100歳まで生きるんだ!!
 間違っても20歳にならないで死ぬのはごめんだよ・・。笑
 まぁそうなれたらいいです。
 
        2003年11月28日 2年C組11番木村五月』




























宏海は泣いていた。








夏樹は座り込んでしまった。






僕は空を見上げた。

あの日のような透き通った空だった。







言い聞かせていた。









もう五月は戻ってこないと。


もう2度と五月の声は聞けないんだと。



もう一生、僕と五月は巡り会うことはできないんだと。


















この空の色を

僕は心に焼き付けていた







 

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Novel Editor by BS CGI Rental
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