びゅうっと風が吹いた瞬間、夏樹が言った。
夏樹「今俺、五月の声が聞こえた気がしたよ。」
櫂「俺も。」
宏海「うん、あたしも。」
櫂「靴投げしよっ!だろ?」
夏樹「そう。いっつも言ってたなぁ。」
宏海「夏樹勝てたこと無かったよね。」
夏樹「そうそう!あいつチビのくせしてあれだけは強かったもんなぁ。」
櫂「どうして今、五月がここにいないのか俺には分からない。」
夏樹「櫂・・・。」
宏海「あたしもよく分からない。」
ねぇ五月。
君がいないことをみんなが不自然に思ってる。
僕の隣が空いているのは今も少しだけ違和感があるよ。
夏樹「おっと、もう6時半だ。帰る?」
櫂「そうだね。」
宏海「うん、じゃあバイバイ。」
櫂「また明日。」
家に着くと、遺影の中の五月が僕を迎えてくれた。
母「櫂?帰ってたの。今日はご飯食べる気になれないでしょ。」
櫂「うん、ゴメン。」
母「いいのいいの。お風呂入ってもう寝なさい。」
櫂「ありがとう。おやすみ。」
母「うん、おやすみ。」
階段を重い足取りで登る。
部屋に入ってパジャマに着替えるとタンスの上にあるCDに目がいった。 何か急にこみ上げるものがあった。
それは、五月が生前僕に貸していてくれた物だった。
「ゆず・・・かぁ。」
手にとって裏を見る。 そこには小さいメモがあって、ひどく懐かしい五月の字が書いてあった。
『これ超オススメ!!聴いてみる価値アリだよ☆』
可愛い、クセのある字。
CDを取り出しコンポにかけて聴いてみた。
【青】
なんだかよく分からなかったけど聴いてみた。
『泪が溢れて途方に暮れた夜に差し伸べてくれたあなたの温もりを僕は忘れはしない』
なんだか僕のようで涙が溢れてきた。
あの夏の日。
君が手を差し伸べてくれたね
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