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忘れられない人がいます 作者:比呂

第6回   オレンジ
家に帰ると、心配そうな顔つきで宏海が立っていた。


そういえばいつもそうだったな。宏海は。
友達が一番大事で、自分だって悲しいのに人のことばかり考えるんだ。


優しい人。



宏海「どこ行ってたの?」

櫂「体育館だよ。宏海こそどうしたの?」

宏海「心配になっちゃってさ。」

櫂「家で待ってれば良かったのに。」

宏海「うん、お母さんは入ってって言ってくれたんだけど
   なんか落ち着かなくって。」

櫂「ごめんな。」


僕がそう言うと宏海は優しく笑って手を握ってくれた。


涙が出そうになる。
あったかい手。


ありがとう。宏海。





宏海の携帯に電話が掛かってきた。


宏海「夏樹だ。ちょっと待ってね。」

櫂「うん。」


宏海「もしもし。どしたの?
   え、今一緒にいるよ。櫂の家の前。うん、じゃあ公園にいるからね。」



櫂「なんだって?」

宏海「同じ事思ってたみたい。櫂の家に行ってみないかって。 
   みんな櫂が好きなんだね。」

櫂「ありがとう。」

宏海「公園行こっか。」



僕にはこんなに自分を心配してくれる人が居るのに
五月はどこか遠い場所で独りで泣いてる。

ほんとは今、五月のいる場所に飛んでいきたい。
抱きしめてあげたい。


現実と夢の狭間を行き来した。





公園にはもう夏樹がいて、僕が見えた瞬間に走って駆け寄ってくれた。

夏樹「大丈夫?」

櫂「うん、大丈夫。」



3人でブランコに乗って
冷たい風の中をこいだ。



右真ん中が開いているブランコ。


まるで誰かが底に座ることが決まっているみたいに。




夏樹「ここ、よく来たよな。」

宏海「五月がブランコ好きだったんだよね。」

夏樹「いつもそこに座ってなー。」

櫂「靴投げしよって言うんだよな。」






「靴投げしよっ!!」






























五月「かっちゃん、宏海、夏樹ー!靴投げしよっ!!」

櫂「またぁ〜?飽きたよもー。」

五月「ぶー。いいじゃんしようよ!」

夏樹「しょーがねーなぁ。」

宏海「ほんとに好きだねー、五月は。」

五月「うん!楽しい!夏樹はいつも靴拾いだよね!」

夏樹「今日こそは勝たせない。」

五月「デカイ事言ってると恥かくよ。」

夏樹「お前こそな。」


櫂「キャラ変わってるって!」

宏海「(笑)」





今日もいつも通り夏樹が負けて
夏樹は悔しがって後一回やろうと言ったけど
五月が認めなかった。






五月「あ!見て見て!夕日が綺麗だよ!!」

櫂「ほんとだー。まさにオレンジだな。」

夏樹「きれー。」


宏海「帰ろっか。」



五月「そうだねー。」

櫂「また明日な!」

夏樹「じゃーな!」


五月「バイバイ。」





























バイバイ



五月。




 

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Novel Editor by BS CGI Rental
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