background=http://www.rivernet.cool.ne.jp/upmini/200505f/20050527220027_7644.gif ■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

忘れられない人がいます 作者:比呂

第5回  
はっと我に返ると、葬式は全て終わっていて
宏海と夏樹が心配そうに僕を見ていた。


櫂「終わったんだ。」

宏海「櫂、顔色悪いよ。」

櫂「平気だよ。ありがとう。」

宏海「櫂、さっきね五月のお母さんがいらっしゃって
   遺影の写真を預かったの。
   櫂に渡してって。はい、これ。」



いつもと同じ、太陽みたいな笑顔が
モノクロの世界の中で輝いていた。


櫂「ありがとう。」


夏樹「もうそろそろ行こうか・・・。」

櫂「・・・うん」




スッキリしない冬晴れに
五月の不機嫌そうな顔が目に浮かぶ。




みんな一言も言葉を交わさずにバスへ乗り込んだ。


家に着くと、みんなは僕を心配して
一緒にいようか?と声を掛けてくれたけど
今日は何だか、独りで居たくて断った。


午後4時をさしていた。





何故か僕はいつも通っている学校に来ていて
誰もいない体育館に独り立っていた。



「かっちゃん。」




そう呼ばれた気がした。

慌てて振り返る。

誰も居ない。


居るはずがない。



櫂「 五月 」





口に出すと思ったより重くて
僕は壁にもたれ掛かって

そっと、目を閉じた。






























五月「私、このひろーい体育館好きなんだ!」

櫂「へー。何でさ?」

五月「シーンとしててなんか不気味だけど
   

   かっちゃんと私しかいない世界みたいな気がするから!」




そう言って振り返った五月が
頬を赤くして笑った。


五月「このままずぅーっと一緒にいたい。




   ダメですか?」



櫂「喜んで。」





手を繋いだ。






























目を開けて、自分の手の中を見た。

何も無かった。








だけどあのあったかい小さな温もりだけは


ずっとこのまま、一生消えないと思うんだ。



 

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections