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忘れられない人がいます 作者:比呂

第2回   白い煙の中に
きっと僕は世界一幸せだったんだと






今はそう思える




















宏海「櫂、平気?」




ずっと前から仲の良い友達が声を掛けてくれた。
だけど今は喋る気になれない。






世界でいちばん大切な人が

いなくなってしまったから





夏樹「櫂・・・。」





心にポッカリと

ブラックホールよりも大きい穴が開いた気がした。





『それでは斎場の方まで行きますので
 ご両親ご家族、あるいはご親族の方は
 霊柩車にお乗りください。
 ご参列の方はバスをご用意しておりますので
 そちらに乗車していただきますようお願いいたします。』








夏樹「櫂、行くぞ。」

宏海「櫂・・・。」





櫂「・・・・行こうか。」






もう表情や感情はどこにもなく
ただ五月の遺影を目で追った。




いつもと変わらない五月が

写真の中で笑っていた。






少しバスを走らせて
どこか遠い林の中にある斎場に着いた。

木々はまるで五月の死を受け入れるかのように
そっと音を立てていた。


僕は全てを切り捨ててしまいたかった。




細長い煙突の先から
白い煙が出てくる。


あの中に五月がいると思うと
何かやり切れなくて
僕は目をそらしてしまった。






五月との、あのおかしな出会いを思い出していた。

 

    
   

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