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忘れられない人がいます 作者:比呂

第10回   最終章  笑顔
五月が死ぬ直前、彼女はこう言っていた。


「あの冬の日、もし出会っていなかったら
 今頃どうなってたんだろうね。
 
 一生口も聞かないままで
 お互い別の人を好きになって
 卒業して、就職して、結婚して、子供が産まれて・・・。

 あぁ、出会えてよかったなぁ。

 かっちゃんと会えて幸せだったなぁ。


 ありがとう。


 先に行ってるね。 バイバイ。」







あの消えそうな声が僕はまだ忘れられない。



以前誰かが言っていた。



『死んだ人にとっての一番の贈り物は、忘れてあげること』



五月がそう望むなら、忘れてみせる。



でもきっとそうは思わないだろう。


バイバイと言ったけど、忘れて欲しくなんかないだろう。
僕もきっと忘れられない。



だから言うんだ。





さよならと。














宏海「バイバイ。五月。」

夏樹「またな。」


櫂「僕たちは後から行くよ。気長に待っててね。五月。」









15歳という短い生涯を終えた少女が
残してきた者に何を想うだろう



残された者は、少女に何をしてあげられるだろう



小さな街で出会った4人の運命は
辛く過酷で無惨だったかもしれない


だけどそれよりも
そんな運命よりも




幸せだった  きっと











僕らは空を見上げ五月を想った。





 かっちゃん  宏海   夏樹






優しい声が胸に響く












もう映らない五月の面影を



一生忘れまいと心に刻みつけて



僕らは大人になっていく

















あの笑顔をしっかりと未来へ紡いで
  






                fin

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