第八章 一視遊戯
男が大きく拳を掲げて、そして、一言。 「It is possible to vanish, and the gate. 」 「・・・?」 男が何か、英語で唱えた時、大きな地響きの音と、上下に揺れる大きな揺れを感じた。遊は立っていられず、よろよろと其の場に腰を落とす。 すると、揺れの所為か、岩が上から落ちてくる気配を感じ取った遊は、眼を思いっきり瞑った。 「・・・・・・・・?」 しかし、落ちて来る筈の岩が一向に落ちて来ない。遊は、ソロっと眼を開いた。 「あ・・・れ・・・?」 「ああ、気にするな。眼を瞑らせるだけの幻覚だ」 すると、目の前に先ほどまであったあの巨大な扉が、モノの30秒も経たないうちに姿を消えてしまっていた。 急いで男まで駆け寄る。そして扉があった場所を摩ってみたり、叩いてみたり、地面に這い蹲ってその場を見たが、何も見付らない。下に埋もれていったのではない。 そうすると、上に扉が上がっていったのか。そう思って、遊は上を見上げる。しかし何も無い。はたまた、そんな機械もそこには無かった。 「なん・・・で・・・」 「なー?だからスゲェって言っただろ?不思議か?」 遊が愕然としている横から、男がそう言って来た。男の拳をチラっと見たのだが、拳にさえも何も無い。 「お前、アレ、ただの扉とか思ってねぇだろうな。チゲェぞ。ありゃぁ『扉』なんで生温いモンじゃねーぜ」 アレが扉でないのなら、一体何なんだ。目を丸くして男を見る。 「・・・じゃぁアレは一体何なんだよ。説明しろよ・・・」 「あぁ!?口の利き方悪ぃんじゃねーの?人様に聞くときは敬語だろ」 「・・・説明して下さい・・・っ」 屈辱。コレが今の遊にはピッタリな漢字だろう。 「何でこんなヤツ・・・」 「じゃー説明してやるよ。アレは『門番』だ」 『門番』。そう聞いた瞬間、遊の脳裏に浮かんだのは。 「・・・『Guardman』・・・」 「あぁ!!?」 「・・・」 遊が口にし、そして脳裏に浮かんだ言葉。『Guardman』。ソレを、遊は何なのか知らない。が、幼い頃から母親に「ソイツらには気をつけないと、駄目よ」と教えられて来たのだった。寝る時には、いつもソレの話しを聞かせられた。絵本風にして。 その内容とは、こうだった―。
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