「痛ってーっ!!!何だアイツ!!本当に医者かァ!!?クソー・・・」 一方、只でさえ痛い点滴を乱暴に外された遊は、ズキズキと痛んできた腕を押さえながら、遊はノソノソと歩いていく。 「チッ、遅ぇーんだよ鈍間ァ!さっさとしろ」 一々煩い男だった。近くまできて、遊は初めてその男の顔をマジマジと見たが、髪はオールバックで黒髪、眼鏡の奥に見える目は、漆黒の切れ長の、いかにも組長とでもいえるような風貌の男であった。 「・・・怖」 「アァ!?」 そして遊はつい、本音を出すと地獄耳なのか、直ぐに反応じてきた。その声は、ドスを利かせた声で、医者になる前は組長だったのだろう、という、遊の勝手な勘違いを生ませた。 「痛むか?」 「へ?」 部屋を出て、長く白い廊下を歩いていて不意にかけられた言葉。 「痛むかって聞いてんだよ。耳ツンポか?」 「・・・っ。痛まねぇーよ!」 「そうか、そりゃぁ良かったな」 「・・・・・・」 今までのあの男なのか、という思いが遊の頭を駆け巡る。まだまだ低い声で怖い声だが、今までの男の声と比べると全然優しい声だった。 「良いトコあるじゃん」 「アァ!!?」 「・・・・・・」 いつもの男だった。 暫く歩いていると目の前にまたエレベーターが見えた。階数を見ると、なんと地下13階まであった。 「はえー・・・こんなに地下あるんだ」 「まぁな」 別にこの男が創ったというわけでもなかろうに。男は中々自慢げに話す。そしてエレベーターに乗り込むと、地下12階のボタンを押す。 「そんなに地下に行くのかー」 「黙ってろ」 「・・・・・・・・っ!!」 そういわれて、遊は思いっきり男をにらみつけた。男が振り返ると、遊は思いっきり顔を逸らす。 そうして大分な時間が沈黙で終わった。チン、と音がして、男と遊はエレベーターを降りる。 「うへー・・・っ、スゲェ・・・つかデケェ!!!」 遊の目の前に立ちはだかるもの。ソレは、巨大な一枚の壁だった。 「まぁ視てろって。これからが、本当の『スゲェ』だ」 男が不敵な笑みを浮かべると、拳を大きく掲げた。 そして―。
第八章へ―。
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