第六章 新装遊戯
「・・・アイマスクを獲れ」 またもや短く言われた。少しばかりぐったりとしている遊。ソレもそのはず。足からは血が流れ、色々な箇所に傷がついていて、遊の精神的な体力も、身体の体力も限界に近かった。 力無き手で、アイマスクを取る。 遊の視界に入ってきたのは、壁一面が白く塗装されており、もの凄く大きな建物だった。 「・・・な・・・何ココ・・・」 そんな建物は、見ても東京の大都会ぐらいでしか見たことがない。しかし、今目の前にある建物は、東京なんて小さなモノだと思わせるぐらい、大きくて立派な建物だった。 しかし、良く見てみると、まるで其処は研究所のようだった。 「HIS・・・少年を連れて帰った。扉を開けろ。・・・あと医療班もすぐさま此方に寄越せ」 声がした男の方を見ると、無線機で何か話していたらしい。 話し終えると、無線機を隣の女に渡して、向きを建物から遊に向けた。 「おい。これからこん中に入る。お前は医療班の奴らに治療を受けろ。痛ぇけど、我慢しろよ。男だろ」 「は・・・はい・・・」 遊はビビっていると、またあの不自然な関西弁の男が割り込んできた。 「ちょいー・・・彗ィー・・・そないにビビらせてどないすんねん。えろぅ可哀想やわー・・・。彗ってホンマ性格よろしゅうないわー。なぁ坊ちゃん?」 「あ・・・はい・・・」 関西弁の男は優しかった。見てみると、結構眼が細い。して、身長も大きかった。しかし、ソレよりも大きいのが、やはりあの怖い男だ。並んでみると、一目瞭然で遊なんて、まるで蟻なのではないかと思うほど大きかった。 「医療班、ただいま到着しました!!けが人は何処・・・」 「其処だ。さっさと運んで。死なしたらテメェらも用無しって事で殺すから」 「はい!!」 そう言われた医療班は、汗をかきながら担架を持ってきて、遊をソレに乗せた。 「あー・・・楽・・・」 横になった遊は、安著の言葉を漏らして建物の中に入っていった。 ソレを見ていた三人組は、口々に何かを言い合っていると、それぞれ嫌な笑顔をみせて、三人組も中へと入っていった。 「スゲェ・・・ッ」 中に入った遊は、第一声を発する。ソレは驚愕を表す言葉だった。建物の中は、研究所らしいところで、やはり外見からも合致がいくような構造だった。果てしなく筒抜けの、高い天井。慌しく行き交う人々。白い塗装。広大な面積。 「ははは。やっぱこういうんは見たことないんかね。外のモンは」 ふと、遊の耳に聞こえてきた言葉。見上げると、マスクをつけているから、顔は良く解からないが、眼鏡をかけた男が呟いていた。 「あー・・・今驚いてたもんな。はッ。こんぐらいで驚くよーじゃ、吃驚しすぎて、心臓でも止まんじゃねーの?」 鼻で笑われた遊は、少しカチンときたので、何か言い返してたろうかと思ったが、最早そんな体力は無く、ぐったりとしているだけで終わった。 そして、エレベーターらしきものの前まで辿り着いた。ボタンを押すと、直ぐに無人のエレベーターはやってきた。 「さっさと終らせて、あの続きしよーぜ」 「あーそだな」 「なんだよあの続きってよー」 「まぁ気にすんな」 普通の会話が遊の上を交わす。しかし、遊はそんな声を聞いてる暇はなかった。激痛が、遊を襲ってきたのだ。 「痛ぇ・・・!!!」 右足にくる激痛。傷が開いてしまったのだろうか。担架からは、血が滴り落ちる。 「おいおい。ヤバくねぇか。コイツ死なせたら、俺らも殺されるんだろー?」 全然まったりとりている。本当にヤバイと思っているのかすら、明確ではない。 「おっ。着いた」 チン、と音がして、エレベーターは9階に着いた。そして、勢い良く飛び出すと、目の前にある部屋の扉を荒々しく開け、遊をベッドの上に横たわらせた。 「うーわー・・・痛そう・・・。あっ・・・痛ぇ!これ見てるとなんか痛ぇ!!」 そんなに痛々しいのか。遊に、不安の拍車をかける。そして、一人の男が遊の身体全身に麻酔を打つ。 遊は、眠りについた。
第七章へ。
|
|