第四章 裏切遊戯
長いくねった道を、走る影。遊は、あのおぞましい事が起きた家から逃げ出し、友の聡の元へと向かっていた。 「ハァ・・・はっ・・・」 荒い息をあげ、車が通り過ぎていく道を走る。この時、遊は止まったら何か、恐ろしい事になる、と身体で実感していた。 そして、道を右に回ると見えた、友の家。遊は、死に物狂いで家に飛び込む。 「・・・ッ聡はいますか!!」 そうして張り上げた声は、安著の声へと変わる。 「なぁに?おわッ。遊じゃん。どしたよ」 二階から足音が聞こえてきて、玄関に来たのは聡。かなり汗をかいている遊を見て、聡は驚いた。 「・・・あとで・・・話す・・から・・・家に入れて・・くれ」 やっとの事で出た言葉。それは、酸素を吸うために途切れ途切れだった。取り敢えず聡は、二階の自分の部屋へと遊を案内した。 「・・・聞いてくれよ・・・。信じないかもだけど・・・」 そうして、少し休んで落ち着いた遊は、テーブルを二人で囲んで今まであった話しを話そうとしていたその時。 「痛・・・ッ」 左脚に、遊は激痛を覚える。何かと思って足を見えると、血がでていた。遊は、走ってきたから傷口が開いただけかと思っていたが、ソレは違った。 「・・・聡・・・ナンダヨ・・・ソレ・・・」 聡の右手にあるもの。ソレは、血が付着しているカッター。 「まさか・・・」 聡の顔を見ると、眼が、虚ろだった。さっき、自分を殺そうとした父親の目にソックリで、再び遊は恐怖した。友が、自分の友が、自分を殺そうとしている。さっきの事よりもショックが大きかった遊は、立ち上がって、逃げようとした。 「――ッ!?」 視界が上を向く。仰向けにさせられて、顔の真上からカッターが降りてきた。ソレを遊は、持ち前の反射神経で交わすと、勢い良く立ち上がって逃げる。階段をよろめきながら降りて、靴を履いて、さっさと逃げようとした。後ろからは、奇声をあげながら、カッターを持ちながら追いかけてくる友、聡。 「・・・何だよ・・・皆して・・・ッ。何なんだよぉ!!!」 そう叫んで、遊は後ろを振り向いた。すると、そこには聡の姿は見当たらない。辺りを見渡しても、姿は見えない。ほっとする遊。トボトボと道を歩く。 「良く、この道通ったっけかなぁ」 そう、呟いた遊の眼には、涙が滲んでいた。 突然、後ろから奇声が聞こえた。ハッとして後ろを振り向いた遊の、右頬は、カッターによって切れた。頬からは、血が流れ出す。 「・・・聡ぃ・・・」 名前を呼んでも、笑わない聡。無表情ではない。笑ってはいる。しかし、その笑みは、嘲笑とでも思えるような、そんな笑みだった。寧ろ、狂気に満ちている。背筋が、寒い。 「・・・やめろよ・・・。聡・・・ッ」 ジリジリと近寄ってくる聡から、少しでも距離を置こうと下がる遊。そしてカッターを振り回してくる聡の行動を合図に、遊は走り出した。 すると、後ろから、銃声が聞こえた。後ろを恐る恐る振り向くと、そこには聡の死体があった。眉間を銃弾で一発。なんと脆いのだろうか。 「・・・聡・・・?」 その様子を呆然と見つめる遊。車の音が聞こえる。近づいてきて、遊の隣で停まった。 「・・・?」 車を覗くと、中に乗っていたのは、サングラスをかけてる女性と男性が乗っていた。 「乗れ」 彼らは、何者だろうか。 遊は、その場に立ち尽くしている。
第五章へ。
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