第二章 恐怖遊戯
「あー疲れた」 学校を終え、部活を終えた遊は、友達の聡と共に下校をしていた。 「ホント。なんで野球部ってあんなに辛いんだろー」 「まぁ仕方ないっしょ」 「そだな」 二人は小学校からの中で、かなり長い時間を共に過ごしている仲。言わば親友とでお言おうか。そんな二人の家は、隣では無い。中々遠いトコロにあるが、お互い遊びに行ったり泊まったりしていた。 「じゃな。また明日ーっ」 「おー」 何時もとなんら変わりは無い。道路だって、草だって、ヒトだって、空だって・・・。 「ん?」 ふと、上を見上げると、遊の視界に入ってきた黒い影。中々大きい。朝見た黒い陰はこれなのだろうか。すると、一瞬太陽の光が遮られた。そんなに大きなモノなのだろうか。遊のココロに、何となくだが、不安が過ぎった。心臓が、いつもより少しだけ早い。そんな微小な違いも、遊は見過ごさないほど、何かに集中していた。 「・・・恐竜?はっ、まっさかー」 空の黒い影を見ながら、自分の考えを否定するように微笑する。すると、イキナリその黒い影は見えなくなった。遊の視界に入ってきたのは、ジリジリと照らす、太陽其の者だった。 「うわっ!!目ぇ痛ぇし!!」 直接太陽を見てはいけない。そんなのは解かっていたが、イキナリの事だったので、目を逸らす合間すらも無かったのだ。目がチカチカする。そんな目を押さえつつ、家路を辿って行く。 「なんだよアレー・・・チクショー・・・目ぇ痛ぇな!!!」 そんな文句を垂らしながら歩いていくと、何時の間にか家に着いていた。遊は玄関の扉を開けた。 「ただいー・・・」 すると、どこかその扉は、重かった。いつもはこんなんじゃない。不穏な気配を感じつつ、ゆっくりと扉を開かせる。開けて、最初に感じられたのは、嫌な生暖かさ。 「なんだよ・・・コレ」 いつもと違う、異様な雰囲気に流されないように自我を保つ。チョット開けた隙間から中の様子を伺ってみる。中は、真っ暗だ。 「おかしいなー・・・母さんは家にずっといるって言ってたのに・・・」 そして、扉を開けたその瞬間。 「―――――――ッ!!?」 新たに視界に入ったのは、自らの母親の、死体。遊が呆然と立ち尽くしていると、奥からなにやら声が聞こえてくる。 怖い。 半端なく怖かった。真っ暗な闇。目の前に、血を流し、うつ伏せになり、横たわっている母親の死体。奥から、不気味に聞こえてくる声。ソレは、唸り声の様でもあった。 「なんで・・・母さん・・・?おい・・・」 動揺を隠し切れずに前にのめり込む様に崩れる。下から聞こえてきた水の様な音。感触は、ヌメヌメしている。間違いない。血だ。 「・・・ッ!!」 遊は後ずさりをする。そして、逃げようと扉に手をかけ、一気にドアノブを捻った。 「・・・ッ!!?なんで・・・ッ」 無情にも、ドアノブは回らない。遊は、この暗闇の中、一人閉じ込められてしまった。ふと、目の前に目をやると、母親と目が合った。 「・・・っ!!!」 遊の身体は一気に強張る。そして震えだす。涙さえ出てきた。ふと、奥から、何かが近づいてくる様な音が聞こえる。その音は段々と大きくなり、遊の恐怖心を、より一層高める。 「来るな・・・ッ!!」 荒い息遣いの中から聞こえた遊の声は、霞んでいて、すぐに空気と一緒に消えてしまう。床が軋む音が、近い。身体を震わせ、顔を伏せ、蹲ってソレに耐える。 なんで自分の家がこんなになってしまったのだろう、そんな思いが頭の中をグルグルと過ぎりだす。 床の軋む音が止んだ。遊は恐る恐る顔をあげる。 「――――ッ!!うわぁ――ッ!!」 目の前にあったモノ、近づいて来たモノの正体。ソレは。
第三章へ。
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