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刹那遊戯 作者:妖華

第1回   第一章 始時遊戯
第一章 始時遊戯

目が覚めると、側から煩い音が聞こえた。遊は、重たい目を抉じ開けながらゆっくりと身体を起こす。煩い音の原因は、青い目覚まし時計だった。
「煩いなー・・・もぅ・・・」
遊はその時計を叩いて音を止める。そして気持ち良さそうに背伸びをする。いつもの、普通の朝。ふと、カーテンから差し込んでいた筈の日光が、何かによって遮られた。不審に思った遊は青いカーテンを開ける。
「・・・何もねぇし」
日光を遮ったモノの正体は、解からなかった。
「あ。飛行機」
その時、タイミング良く上を通り過ぎた飛行機によって、本物の正体は明確にはならなかった。そのまま遊は身体を起こし、ゆっくりとベッドから身体をズラして床に足をつく。
「うわっ」
何かを踏んだ。そろーっと下を見ると、ソコには太っている白い猫が、足に踏まれながらも寝ている姿があった。
「ホト・・・お前また太ってねぇか・・・」
ホトと呼ばれた白い猫は、未だ目を覚まさない。遊はそんなのは放って置いて、さっさと学生服に着替えた。その学生服は中学校の物。遊は中学3年生の15歳。そんな彼は、コレから学校へ行く為に鞄を背負って階段を降りた。
「早よー・・・朝めしはぁ?」
「テーブルの上に置いてあるわー。早く食べなきゃ遅刻すると思うんだけどね」
「どうも」
朝ご飯を用意してくれていたのは、勿論母の初未。髪の毛はブランで、40歳に突入したばかりには見えなかった。そんな母が、遊は少しだけ自慢だった。好きではないが、若々しいお陰で、授業参観などでクラスで中々自慢できる。
「じゃぁ行ってきます」
遊は、朝ご飯だったパン一枚を少しだけ残して、さっさと行こうとした。その背中に母が、いつもより寂しげに「行ってらっしゃい」と声をかけた。その声に遊は、一瞬違和感を感じたが、そんなのも気に留めずに靴を履いて玄関から飛び出していった。ソレと同時に後ろからは、ホトの泣き声が聞こえた。
初未は顔を歪めて、遊が出て行った玄関を見ている。
「おーい、朝飯ー」
ふと、上から夫の義唯の声がし、はっとした初未は返事を返した。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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