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The last light〜最後の灯〜 作者:妖華

第4回   第4章 魂の灯
「”灯”・・・つまり貴方の”魂”です」
「俺の・・・”タマシイ”・・・?」
嫌な汗が流れてきた。普通ならこんなの、冗談で笑い飛ばせる。しかし、今は状況が違う。
灯の真面目な顔。一心に優だけを視てる目。
優の心臓は、高鳴っている。異性に見つめられドキドキしているのと、『タマシイ』を貰うと言われた恐怖が重なって。優は、思わず後ずさりをした。
「・・・あの・・・そう言われても・・・困りますっ」
優は無意識に苦笑いをしていた。
そんな優に、灯は困った表情を一瞬見せた。
「・・・いえ。無理にとは言いません・・・」
「でも!あの・・・”タマシイ”を貰うって・・・ソレってつまり・・・」
慌ててる優を視て、灯は小さく笑った。こんな状況なのに。
「・・・貴方の”魂”と言いましたが・・・それは『貴方を殺す』って言う訳じゃ・・・ないんですよ・・・あははっ!!」
なんとか堪えてた笑いを、堪えきれず笑ってしまった。
笑った顔はいつもの倍、美しかった。
「・・・・・・・・・はい?」
優は、未だ何で笑われているのか解らないでいた。
ただ呆然と、そこに突っ立っていた。
すると、笑い涙を拭きながら灯は優の方を向いた。
「・・・貴方の・・・”大切なモノ”さえ貰えれば良いんですよ」
優は拍子抜けだった。
「俺・・・てっきり殺されるのかと・・・」
すると、また灯は笑い出した。
「・・・・・・・あのぉ・・・」
思いっきり笑い飛ばしている灯に、今度は優が困った顔をした。
「あっ。すみません!!つい・・・っ」
笑っていた時に、口の前で口を隠していた右手を前に持ってきて、俯いた。
「・・・で。オレは”大切なモノ”を貴女にあげれば良いんですね?」
「あ・・・はい!!」
灯は、明るい顔をしてきた。そして、優の右手を掴んだ。
「嬉い・・・私・・・コレで”天”に還れます。本当に有難う御座います!」
「あ・・・いえい・・・」
優は、異性に手を握られたのなんて、2回位しかなかった。
たちまち優の顔は、赤くなっていった。が、優は気づいてしまった。
・・・このヒト・・・冷たい・・・。
灯の体温は、死体の様に冷たかった。思わず、優のカラダにゾクリと寒気が走り、鳥肌を立たせていった。氷より、少し控えめな冷たさ。尋常じゃ無い。
彼の世から来た・・・・・・『ヒト』・・・じゃない。
優の顔は、先ほどまでと一変して、どんどん青くなりつつあった。身体は震えだす。照れて、赤くなっていた顔は今やドコにもない。
そうだ・・・この『ヒト』は・・・『ヒト』じゃないんだ。
優は、右手を思いっきり振りほどいてしまった。
顔色が、もの凄く悪くなってきている。
「・・・あっあの!!大丈夫ですか・・・?」
「・・・・・・っ」
全身からは、嫌な汗が出て来ている。
口に手を当てて、吐き出しそうなモノを懸命に抑えている。
床に手を着いて、四つん這いになって、下を向いて、成るべく灯の顔を見ないようにしていた。見たら、吐く。胃が締め付けられるような、嘔吐感。
込み上げて来る。感情と共に。
「あの・・・私・・・何かしましたか・・・?」
そう言って、灯は訝しげに優の顔を覗き込んだ。その瞬間。
「・・・・・・っ来るな!」
優は、灯を突き飛ばした。灯を見た瞬間込み上げて来た。
灯は近くでしりもちをついて、ただ優を見つめて呆然としていた。
長い髪が、乱れてグシャグシャになっている。
そして、その拍子に視えた灯の細い足。そこには”霊魂”という印が施されていた。
俺は幽霊に・・・。
どうしようもない嫌悪感。先ほどの、冷たいカラダ。その感覚を思い出すだけで吐き気がする。『ヒト』じゃない。『霊魂』。
すると、灯は立ち上がった。
「・・・済みません・・・色々とご迷惑をお掛けしました・・・もう、逢う事はないでしょう・・・さようならっ」
そして、灯は屋上のフェンスを一気によじ上った。元々低いフェンスは、女性の灯でもスルスルと登っていける。優には、灯がこれから何をするのか解っていた。
灯は、飛び降りるつもりだ。
「・・・っ待て!!」
優が灯に呼びかけたが、灯は優を視ると微笑んだ。そして。
「私の顔、また見てもらって、嬉しいです」
灯は一瞬にして、優の視界から消えた。
その後に聞こえた、嫌な鈍い音。そして、人々の、悲鳴。
優は、フェンス越しに下を見た。そこには・・・。
「・・・・・・・灯・・・?」
そこには、血だらけでカラダが何ともいえない状況になっている、無残な灯の姿が有った。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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