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The last light〜最後の灯〜 作者:妖華

第3回   第3章 衝撃の灯
アナタは、何故あんな事をしようとしたのですか?」
男性は、病院の屋上で女性に聞いてみた。それなりのムードがあった方が良い、と余計な気遣いをして屋上に態々移動したのだ。
「・・・・・・・・」
やはり、女性は話さなかった。もしかして、このヒト口が利かないのかも。なんて思った矢先に、不意にかけれた言葉。
「お名前を・・・教えて頂けませんか?」
その女性の声は、澄んだ声をしていた。そして、男性にとって聞き覚えのある声でもあった。
「あ!オレは佐竹 優です・・・!」
優は、しどろもどろしながら答えた。
「私は・・・緋仮 灯・・・です」
あかり・・・良い名だ。優はしみじみと思ったそうだ。
そして、真面目な顔をして灯に問いかけようとしたが、それは灯の問いかけによって遮られた。
「貴方は・・・なんで私を助けてくれたのですか・・・?」
「・・・貴方が・・・昔好きだったヒトに・・・凄く似ていたもの出・・・つい」
優は、顔を赤く染め、ポリポリと頭を手で頭をかき、笑いながら言った。
そう。優は最愛の女性を事故で亡くしてしまっていたのだ。灯はその女性、『水里 光』の生き写しかの様に良く似ていた。いや、似過ぎていたのだ。
その時、灯は切なそうな顔をして、そして一言。優に聞こえないくらい小さな声で「だってそうですもの」と呟いた。勿論、優には聞こえていなかった。
そしてタイミングを見計らって優は問う。
「さっきも聞きましたが、なんで・・・あんな事・・・」
「・・・・・・・・」
やはり、駄目か。無神経な事、聞いちゃったかな。
優は違う質問をしようとした時だった。
「私は・・・”灯”・・・なんです・・・」
その聞きなれない言葉に、優は戸惑いを感じる。その言葉を発した時の灯の声は、小さく震えていた。
「え?」
灯は、虚ろな顔をして言った。かなり、悲しそうに。
「とも・・・しび・・・?」
確かに彼女はそう言った。しかし”灯”とは、何なのか、解らなかった。
「・・・こっちのセカイでは・・・長くは・・・だからもういっその事死のうと・・」
「何・・・を・・?」
セカイ?こっちの?何を言ってるんだこのヒトは。
しかし、灯は、大粒の涙を零してしまっていた。
「え・・・!?」
突然の灯の号泣に、優は眼を丸くした。
「私・・・まだ死にたくないです!!」
目の前で女性に泣かれてしまった。周りのヒト達の視線が妙に痛い。
優は、兎に角灯を泣き止ませようと試みた。
「あのっ・・・ハナシが良く・・・解りませんが・・・」
「・・・私は・・・言わば『霊魂』だそうです・・・」
『霊魂』。いわば幽霊。優は、黙ってしまった。
(幽霊・・・ははっ。そんな馬鹿なハナシが・・・)
優はココロの中で少し笑った。
「本当・・・です・・・本当なんです・・・」
その声の重さに、優ははっとする。
「まさか・・・本当に・・・だって、足見えるし、透けてないし、影もできる・・・それに怪我だって・・・」
優は無い頭絞って、頭の機能をフル回転させて、論理に沿って灯という『ヒト』が『霊魂』だという事を否定しようとしている。
「・・・このヒトの身体を・・・借りてるだけです・・・」
「・・・・・・あ。なるほど」
『借りてる』。それは即ち、『憑依』だという事を優は知っていた。優の努力も虚しく、自分の意見よりも納得のいくような解答をされてしまった。二人の間には、数分間もの沈黙が続いていた。
そうしてる間に、屋上に居たヒトは、もう何処かへ行ってしまう。
屋上に、何羽もの烏がとまっている。逆に、この方が良い。話し易くなった。
そんな沈黙を破ったのが優。
「俺に・・・何か出来る事は・・・?」
「・・・優・・・さんに・・・出来る事・・・」
また沈黙。そして。
「・・・有るには・・・有ります」
「そうですか!!良かったぁ・・・」
優は、無邪気に喜んだ。これから、衝撃の事実を知る事となるのに。
その、衝撃の方法とは・・・。
「貴方の・・・”灯”を・・・貰うのです」
「俺の・・・”ともしび”・・・?」
たった今吹いた風が、妙に身体に染み込んだ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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