街灯は、細々とか弱く点いている。 でも、ヒト達は決して道に躓いたりしない。 足元は照らされている。 綺麗な太陽の灯に―。
第1章 The first light〜最初の灯〜
人々が、行き交う交差点を一つの灯が照らした。 そして次々と照らしていった。それは雲からはみ出た、太陽の光だった。 その交差点の真ん中に、女性が立っていた。 白いワンピース姿の、漆黒の長い髪、赤い唇。 「・・・」 女性は何か黙っていた。 交差点の信号機が、チカチカと点滅し、赤に変わる。 女性は、動かない。 「・・・・・・・」 大型トラックのクラクションが鳴っても、動かないでいた。人々は恐怖の叫びをあげる。その時、太陽の光が女性だけを照らしていた。 「危ない・・・ッ!!」 重いものが重いものに激突した様な、鈍い音が辺りに響き渡る。人々はまた叫びだした。 「・・・・・・・ひッ」 女性は右頬をひき吊らせ上ずった声を上げた。さっきまでジブンが居た場所に、見知らぬ男性が血だらけで、横たわっていたから。女性は、そのまま動かなかった。並みの女性の神経なら、当たり前だろう。目の前でヒトが轢かれてしまったとなっては。 女性は、名も知らぬ男性の顔が見えた途端、顔色がみるみる良くなっていった。普通はその逆になる筈。その顔には、笑みさえ零れた。その表情には、何を意味するのか、何故ぼーっとしていたのか。この女性は多くの謎を秘めている様だった。 「早く救急車を!!!」 人々は、何かを一斉に言い出す。 女性は暫く動けなかった。数分もしないうちに遠くから救急車の音が聞こえてきた。男性は、運ばれていった。そして、女性も・・・。
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