朝、母は朝食を作らない。
だから朝食はいつも、自分で何かしら食べる。
そこまでは良いとして…問題はお昼だ。
母の作ったお弁当。
おかずが入っている小さなお弁当箱1つに、おにぎり1つが私の昼食だ。
お弁当箱を開けて、顔をしかめる。
甘い卵焼きにウインナー、そしてほうれん草のおひたし、から揚げだ。
ウインナーとから揚げは出来合いだから、まあ良いだろう。
問題は…卵焼きとほうれん草だな。
ゆっくりと口の中に入れて、時間をかけて噛む。
ほうれん草は大丈夫だった。変な味も歯ごたえもしない。
だけど卵焼きで、私は動揺した。
けれどそのまま噛んで、飲み込む。
…周囲に人がいなければ、吐き出していたが。
そして夕方、家に帰るとすでに夕飯はできていた。
なので注意をしながら、おかずを見る。
白いご飯に、お味噌汁は大根が具だ。
そこまではまあ良いとして…。
他はハンバーグにキャベツの千切り。そして肉じゃが。
…ここら辺から、とても危険な感じがする。
なので一応、母に尋ねる。
「コレ、大丈夫…だよね?」
「大丈夫よぉ。さっさと食べなさい」
そうは言うけど、母は一緒に食べない。
しかし私はお腹が減っていた。
なので食べる。
…多少違和感は感じるけれど、何とか平気みたいだ。
「卵、いる?」
「うん、食べる」
卵かけご飯は私の好物だ。
警戒心を解き、食べすすめたのが…間違いだった!
―30分後。
ぎゅるるるるっ!
私はものの見事に、トイレの住人になっていた。
トイレにこもること、10分後。
青い白い顔でトイレから出た。
貧血でクラクラするし、お腹は痛い。気持ちが悪くて、吐きそうだった。
でもどうしても、母に言わなければならないことがあった!
「お母さんっ!」
母のいるリビングに行って怒鳴り込むと、母は目を丸くした。
「どうしたの?」
「どうもこうもあるかぁ! やっぱり古いもの、食べさせたわね!」
「あら、やっぱりダメだったか。あの卵、火を通せば大丈夫だと思ったんだけどねぇ」
「どうりで変な味がすると思った! ついでにあのハンバーグと肉じゃが、いつ作ったやつよ!」
「ハンバーグは三日前、肉じゃがは五日前に食べたじゃない」
「だからいつも言ってるでしょ! 古いものは捨ててよ! 変なもの、食べさせるなぁ!」
体調が悪くても、ここは強く出なきゃいけない。
ウチの母はズボラだ。
料理では味見をしないことは当たり前、賞味期限が過ぎてても、冷蔵庫・冷凍庫に入れときゃ大丈夫だと本気で信じている。
だから味オンチになるんだよ! ウチの母は!
でも私は普通! 古いものを食べさせられたら、体調を崩すんだ。
トイレの住人になったことは数知れず。
怒りもピークだ。
「今度古いもの食べさせたら、病院に行くからね! 慰謝料、要求してやる!」
「はいはい、分かったわよ」
…と言う母だが、絶対1時間もすれば忘れてしまう。
最近、うっすら殺意を抱くようになった今日この頃。
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