人は、死ぬときに何を思うのだろう。 よく、人生の走馬燈を見るという。歩んできた人生を振り返って、この世に未練を残すのだろうか。生きることの無意味さを教えられるのだろうか。死ぬことは快感だと知るのだろうか。 訪れた死が、殺されたとあっては望月壮太郎には想像も付かない。犯人を怨ずるのか。もしかすると、脳内を駆け巡る脳内麻薬のβ−エンドルフィンが全てを赦させるのかもしれない。 いずれにせよ、無惨にも生きる手段を潰えさせられた死と深く関わってきた望月壮太郎には、ネガティヴな発想しか浮かばない。 讃良亮介の残したダイイング・メッセージも、犯人を断罪したいのか、贖罪させたいのか、本意は分からない。望月壮太郎を含め事件の捜査に当たる警察官には、真実を明らかにするしかない。
望月壮太郎が、胸ポケットから推理小説の印刷された紙を取り出す。被害者が日めくりカレンダーに残したもう1つの数字。そこには讃良亮介が残した最後のメッセージが浮かび上がってくる。 6つの禍々しい推理小説が、黒い口を開けて笑っている。
「8月31日」から「9月4日」にめくられたカレンダー。
黒死館殺人事件 ABC殺人事件 皇帝のかぎ煙草入れ ギリシア棺の謎 死の鉄路 犬神家の一族
犯人の動機は予測の域を出ない。物証もないこの時点で、犯人を割り出し、緊急逮捕に踏み込むのは早急だ。 しかし、望月壮太郎の推理が正しいならば、被害者が死の間際に伝えたかった人物は、この二つの鍵に集約されている。
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