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カンカク 作者:

第1回   電車
 朝から指先がビリビリする。僕の手は壊れたのか?
ボクが思うに、この手の痺れは勉強のやりすぎだ。なんたって、今日からテスト週間だ。3週間前から勉強しないと学年トップは維持できない。
 だいたいボクの友達はバカだ。今まで、一緒に学年トップを目指していたのに、
女にうつつを抜かすから、もう相手にしてやんない。
 ボクの日課は一週間通して全部決まっている。
 満員電車に乗って、英単語を覚える。電車を下りたら学校に
向う。その時、数式を覚える。
 学校に着いたらノートまとめをする。それが終わったら職員室に行って、
学校の掃除をする。コレは、内申点を上げるため。
掃除が終わったら洋書をゆっくり読む。
そして授業が始まって、終わって・・・下校する。
 帰ったら、晩御飯・風呂まで勉強して、晩御飯・風呂が終わったら
また勉強を再開して午前3時までする。そして就寝。起きるのは7時。
これも両親の望む東大に入るため。
 あぁ・・・東大に入りたい・・・。
「キャっ!」
 ん?女の声?あぁ。そっかー。電車にいるんだったー。
って!!英単語1つも覚えてない。
「すみません。隣、いいですか?」
 多分、さっきの声を出した女の子だ。ロングヘアーで可愛い。
「どうぞ。」
 どうやらボクのカバンが邪魔だったらしい。
「すみません。」
 彼女はそう言うと、横に座った。さ、単語を覚えよう。
・・・。なんだかいい匂いがする。
横の女からだ。シャンプーのほのかな匂いがする。
これじゃ、もう集中できない。
 横を見ると、彼女の端正な顔立ちが引き立って見える。
じっと見つめていたら、彼女がボクを見てきた。
「栄冠高校ですよね。」
微笑みながら聞いてきた。
ボクはすこしドキっとした。
「あ。うん。君は西華だよね。」
 西華学園の制服は白のセーラーだ。冬服は長袖セーラーに白かベージュの
カーディガンだ。
今は夏だから半袖から白く細い腕が出ている。
「そう。えっと・・・」
「あ。ボク?三河 双(みかわ そう)。高1だよ」
「私は佐田 壱(さた いち)。私も高1。」
 彼女はボクにそう言うと微笑んだ。その微笑でボクの心臓は動悸をし始めた。
彼女にも聞こえるんじゃないかってぐらいだ。
 多分、今までボクは女と喋ったことがないからだ。
 あっても必要以上喋ったことないからだ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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