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ちまたでウワサのうちゅうじん 作者:桜亞

第6回   学生G


 前略
 こんにちは。突然のお便り、失礼とは存知ますが・・、もう、失礼なんですからとことん失礼させてもらいます。
 僕は学生G。この手紙は、今の科学と文明の発展に役立つ大変貴重なものだ。どうか捨てないでもらいたい。今、僕は大学生である。決して常識外れのワルな中学生ではない。確かに、この手紙はあなたの気を悪くするのは百も承知である。でもこんな事でいちいち怒っていたのでは、この世の中渡ってはいけますまい。それに、敬語が出来ないのは僕のせいじゃない。そういう風に生まれてしまったのだ。あなたに僕の存在を否定する権利など無いのだから。勿論、常識はあるつもりだ。良心と共に。
 さて、本題に入らせてもらう。実は僕はとある大学の教育研究部に所属している、教育研究部が何の用だと思うだろう。だがどこに人材が転がっているのかなんてこの地球上の誰が分かるであろう?僕も分からなかった。自分のこの素晴らしい才能がさ!馬鹿みたいに教育に青春を注いだ、僕の誤りだった。僕には教育者としての才能は無いと思う。しかし僕には別の才能があるのだ。そう、宇宙をまたにかけた科学者、そして研究者としての才能が。僕はこの間のある講義で目覚めた。あの狭い部屋に同士と呼ばれる数十人の人間と共に、何時間も詰め込まれるあの責め苦!あなたはお分かりになるだろう?そして呼ばれた講師のレベルの低さといったら。これこそ教育部で真剣に討議するべき内容だ。未来を担う僕たちがあのような教育を受けてよいのだろうか。あんな校長のいる学校で勉強する生徒達が可哀想ではないか。僕は子供が好きだ。常に新しい刺激を求め、考え出すあの 才能よ。だんだんと薄汚く汚されていくあの教育現場に僕は激しい失望を抱いた。そう、話を戻すと僕が言いたいのは教育のことじゃない。こういう事は文部化学省でも、教育支援課にいくらでも送りつけたらいい。実際送った枚数は三枚だが。この前の講義では、その講師が校長を務める小学校での、とある噂についてだ。
 UFOが来る!
ここで破ってもらうと困る。いいか。彼等の推測によると、近くのある人間は実は宇宙人で、密かに学校の近くの神社と連携してUFOとの更新を図っているらしい。現にその近くに住む子供の家にかかって来た電話は、何らかのテレパシーを感じるものだったそうだ。神社と電話、及びその学校近辺の地形など、そのような事を調べることを既にUFOの研究者、神秘的分野専門宇宙科ほにゃらら氏に依頼してある。常識がなってないのか未だに返事が来ない。あなたに限ってはそのようなことは無いと信じている。
 さて、その校長の長ったらしい演説の終盤の話だ。ずらずらと噂を何のまとまりも持たずに喋りつづけていたが、その中からいくつかをお伝えしよう。何も私は児童を批判しているのではない。ちなみに、あの講師は見かけによらず戦後生まれで、戦争色は無い。ただ坊ちゃまであったらしく、話の流れがきれい過ぎるというかついていけない内容があった。その部分は省きたいと思う。
 UFOについて言えば、毎週火曜日と金曜日にその怪しげな人物は交信するらしい。神社は時々早く開門する事があるらしいが、その時にどうもUFOは来るということだ。
 なんと、一番大事なことを忘れていた。素晴らしいと思う。一番大事な結論はこう。
 地球上に起こる、あらゆる自然現象、異常現象などは、宇宙から密かに来た宇宙人によって引き起こされているのだ!
 こんな事、誰が今までに考えついただろうか。もし考えついたとしても、誰がそれを専門家にまで持っていくことをしただろうか。
ここで僕の仮説だが、この理論でいくとすると、今まで自然の力、まぁ強いて言えば神々がやったと思われていたことが、実際に宇宙からの力により行われていたとしたら?いや、実際されていたとして、彼等は何故私達の星を動かすのか。まず考えられる従来の小説の流れからいけば、彼等はチキュウを侵略にきたということ。しかし、こんなにも大きな力を持つ彼等にとって、そんなにチキュウは魅力的な星だろうか。もしかしたらそうであるかもしれない。もう一つ、彼等が自分達の力を他の星の者に見せつけたい場合。しかしその場合も侵略をすればすむこと。まぁ、考えてみれば、他の星との戦いで、たまたま何らかの理由で地球という星が関わっただけかもしれない。さらに、彼等が本気で我々を救おうとしている。もしかしたら彼等が自然を調整してくれてなかったら、地球は当の昔に滅んでいたかもしれない。密かに助けてくれている恩も知らず、僕たちが勝手な行動を起こそうとするから、最近、未来の地球環境が怪しいという。こんな仮説も立てられる。宇宙人について正しい知識も持たずに、SFなどの作品をああいうものにしてしまったから、宇宙人が怒ったとも考えられる。このあたりの仮説は、ファンタジー及びSF小説、研究者のk氏の秘書の方に送っておいた。勿論、この後僕が一番心配している仮説もだ。
 最後の仮説はこう。もしかしたらこの地球という星は、神と呼ばれる者達、すなわち宇宙人によって生み出された創造物なのでは?
というものだ。何故心配するかというと、そんな事なら、僕等が今信じている、分かっている範囲以内での宇宙は、全くの作り物に近いということになる。こんなに悲しい事があるだろうか。ましてやあなた達のような研究者なら、失望も甚だしいだろう?自分達が創造した物なら面倒、管理して当然だから。
 そんな事を言っていたら仮説などいくらでも立つというものを。人間は愚かなものだ。そしてこれは僕の想像に過ぎないが、文明は低いのではないだろうか。
 そう。じゃぁ少し気分を変えて本当に宇宙人は来ているのか、という疑問にお答えしよう。答えは僕なりにかなりの確率でイエスだ。なぜなら。ここであのまつたくナンセンスな校長の話を思い出していただきたい。あ、まぁ知らないならけっこうである。
 噂は鵜呑みにしてはいけないと思うが、同時に今の人々の心情や現状を知るのにとても有効だとも思う。
 だらだらと続く話の中で、僕が一番興味を持ったのはこの噂だ。
 必ずと言っていいほど、無くなっていく傘の謎。各学年、各クラス。一年に三本以上の傘が無くなる。誰かに間違えられたのか、何年経っても出てこない傘の数々。しかも無くなるのはビニール傘が圧倒的に多い。しかもこういうことはあの学校だけでなく、どの学校にもあり得ること。もしかしたら、日本全国に宇宙人が潜伏していて、傘を取っていくのかも。電車の中で一番忘れやすいのも傘。そしてなかなか見つからない・・。そして、世界の中で日本人がよく傘を使うということは知られた事実です。傘の柄の金属、何か感じるだろう。世界各国でも、きっとあるに違いない。
 さて、ここに上げたのは、あの講師の話の十分の一にも足らないし、僕の言いたいことに関しては百分の一にも満たない。
 しかし悲しい事に便箋がもう無い。
 ここらで終わりにしなければいけない。今度また話がしたい。同封した電話番号、期待しています。
 お返事お待ちしております。無礼にしてすみませんでした。
                 敬具
  学生G

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Novel Editor by BS CGI Rental
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