カランコローン♪ ドアと開けた。 そこには、30歳くらいの女性がニコッと笑って私達を出迎えてくれた。 『今日は、中学校の体験学習で来ました。3日間だけど、宜しくお願いします。』 私達は、ていねいにあいさつをした。 すると女性は、 『3日間、たくさん学んで帰ってくださいね。きっとためになりますから。』 と言った。 最初は、何をするのかさっぱり分からず、私達は呆然としていた。 女性は、 『最初に、外の掃除と中の掃除をしてくれる?それが終わったら、教えてね。』 と言った。 私達は思わず、『え!?』と言いそうになるくらい驚いた。 髪についてやるところじゃないのかと疑問に思いつつ、私と友達は手分けして掃除をした。 私は、中を掃除した。 なぜなんだろう... お客さんの髪を洗ったりはしないのかと、少し腹にたったように思えてきた。 せっかく来たのに、3日間こればっかだったら、最悪だ、と。 掃除中、あるものに気付いた。 棚の上に写真が置いてあった。 2人で、この場所で笑っている写真だ。 そこに写っているのは、さっきの女性ともう1人の男性だ。 疑問に思い、その写真をしみじみ見ていると女性が気付いた。 『これはね、私の旦那なの。3年前にこの世を去ったわ。』 私はびっくりした。 二人は、夫婦だったのだと。 私は、 『一体、なぜ・・・?』 と、とても聞きたそうな顔で言った。 すると女性が今までの事を話してくれると言った。 外で掃除中だった友達も気付いたらしく、こっちに来て、二人でその話を聞いた。 『・・・あれはね・・・。3年前の突然の事故だった・・・。その日は私の誕生日で、旦那が車でケーキを取りに行く時のこと。彼は私を驚かせようと思っていたみたいで、突然家を出て取りに行ってしまったの。私には、“ちょっと買い物行って来る”と言って家を出たわ。それでも、30分たっても帰ってこないの。心配になり、外へ出て近所を探したわ。 すると、真っ赤な血を流した彼がケーキを持って倒れていたの。そこは人通りの少ないところだったから、私が来るまで誰も気付かなくて、ひいた車もなかったわ。ひき逃げされたの・・・。私は、何が何だか分からなくなって、とにかく彼に話しかけたわ。“・・・ねぇ・・・起きてよ・・・死んだらあたし一人になっちゃう・・・あなたがいなくちゃ、生きていけないわ!!”と。すると彼が一瞬だけ動いたの。すると苦しそうにこう言うの。“・・・お・・・前は・・・一人・・・で・・・も・・・大丈・・・・・・夫・・・・”って。少したってから、救急車が来て彼は運ばれたの。しかし、丁度私が生まれた時間に・・・彼は・・・』 そう言って女性は、涙ぐんでいた。 私達も、悲しそうな表情を浮かべ、お気の毒そうにしていた。 女性は、こんなところで泣いていても仕方ないと思ったらしく、涙を吹き飛ばし笑顔でこう言った。 『だからここは、絶対私が大切に守るの!彼のお店だから!必ず、良い美容室にするの!』 私達もニコッと笑い、 『これから3日間、本当に宜しくお願いします。』 と頭をさげ、掃除に戻った。 私は思った。やっぱに、いい人なんだな。3日間頑張らなきゃ・・・。
この時、美里の心はもう動いてたかもしれません・・・。
掃除が終わると、女性の元へ行き、終わったという報告をした。 すると次に窓拭きを頼まれた。 さっきは疑問に思っていたけれど、今回は違った。 私の心の中で何かが動いていたからだ。 頑張って、心をこめて、窓を拭いた。 友達も私と同じ気持ちになったらしく、こっちを見て目でニコッと笑った。 すると、もう時間になった。 元気よく、 『ありがとうございました!!また明日来ます!』 と言い、女性に会釈をした。
帰り道、私は友達と話した。 『すごいよね、あの人。旦那のために一生懸命頑張ってるんだね。すごく心優しい人なんだね。』 友達は、私に笑いかけて、こう言った。 『美里ちゃんが、そんな風に話したの、初めて聞いたな〜。学校でももっと、積極的に話せばいいのに・・・。』 と。 私はふと過去の記憶に戻った。 そして思わず、 『・・・そっ・・・それは無理だよ。それは・・・。』 と言い残し、駆け出した。 『え!?ちょっと待ってよー!』 と大声で叫んでいたが、私は何も聞こえなくて、大粒の涙がこぼれた。 私は家に帰って、部屋に入ると、ベッドの上で泣き出した。 そして、自分が生きている意味を考えていた・・・。
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