この緊迫した雰囲気を壊す方法は幾らでもある。 君はどうやってこの雰囲気を壊す…?
観覧車の下の支柱。 あたしのよく知る右上がりの字が釘か何かで彫られていた。 “20××年.01.10 雪薇/頼音 忘れ物を取りに焦って走る” …ぷっ 初デーとのあたし達は、全てにいっぱいいっぱいで、携帯電話を無くしてたのにさえ気が付かなかった。 気づいた時には遅く、二人で急いで忘れ物管理所まで走ったんだっけ。 それ程前の事じゃないはずなのに…ずっと、ずっと昔のような気もしてならない。 …3通目の手紙が、そこにはあった。 「あの、手紙って忘れ物にないですか?」 あたしの質問に、おじさんは“あるよ”と真っ白な封筒を取りだした。 忘れ物管理所に何て普通の人は手紙を預ける何て事、しないだろうけど…生憎彼はその“普通の人”の域をとうに超えている。 『弱すぎた俺から君に送る三つ目の手紙です。』 近くの売店でアイス・コーヒーを買い、空いてる席に腰を降ろした。 戦闘準備万端…というように、構え手紙を開いた。 『君に、一目惚れした俺は、君の誰も寄せ付けない猫のような性格と態度に惹かれたです。 「マゾかよ」…これは大槻に言われた言葉です。そうかもしれない。 やっとの事で話し掛けるタイミングを見つけた俺は、猛スピードで君の元へ走った。 空想通り、君は素っ気なかったから、思わず笑っちゃったのは失敗だった。 軽い男って…思ったよな? それでも俺の、この髪の色を気にしてくれた君に俺は、一種の運命だと言わんばかりに話し掛けたけど…本当は不安だったんだ。 クールな君にはクールな奴じゃないと釣り合いが取れないんじゃないか…っと。 ちょっと創った、カッコばっかりつけてた俺だけど、君はそんな俺の裏側が好きなようで、何度も笑った顔が好きっていったよね? 本当の俺を見つけてくれた気がして、凄く嬉しかった。 俺は、君に惚れてたよ。めちゃくちゃになるほど。 だから…これだけは忘れないで。 この色は“夏蜜柑”色だから。
次のヒントは…もう一人いたよね?
ps.この緊迫した雰囲気を壊す方法は幾らでもある。 君はどうやってこの雰囲気を壊す…? 』
雰囲気を変えるには…相手といっぱい喋ること。 喋って喋って、何時しか二人で居ることが楽しくなるように。 …ねぇ頼、これもあなたに教えてもらったんだよ。 「あの…これ、届けてくれた人は。」 どんな人だったんですか? そう問い掛けようとしても、どうしても続きが出てこなかった。 でも、あたしはもう知ってた。あたしの級友や、大槻だ。 「ああ、背が高くて、ピアスしてて…。」 背が高くて、ピアス? 覚えがないということは本当に見ず知らずの人が届けてくれたのだろうか…。 少し、方を落としあたしはその場を立ち去ろうとした。 「それで、髪の毛がオレンジ色の少年だったようね。」 !?………オレンジ? あたしはもう一度手紙を開いた…。そして、両手でギュッと握って見せた。 〜〜〜〜〜頼。 『この色は夏蜜柑色だから。』 うん、分かったよ頼。 夏蜜柑は健在なんだよね? あたしは信じるから、頼は絶対夏蜜柑を染めないって。
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