俺の背中に生えていた羽根はもがれて、 それでも必死に飛ぼうとしたんだ。君に伝えたくて。
“愛してる”の言葉一つかけてやることが出来ず、取り敢えずホテルに帰る、と言った君を引き留めることさえ出来なかった。 絶対大丈夫だ。と信じ続けた俺と彼女の間に存在した愛は、一瞬で消え去ったのだろう。 手紙を書く前は遠くにいても見える程分かった気持ちが、今ではもう霧がかかったように見えなくなっていた。 君が置いていった手紙を拾い上げ…握りつぶした。 何回も、何十回も書き直した手紙、無惨にも引き裂かれ涙一滴も零れることはなかった。 泣き崩れた君を目の前にして、嫌にはっきりとしてる頭。 こんな状態でどっかのB級小説にしか出てこないような表現、実際に起きるとは微塵も考えたことが無かった。 どうすることも出来ず、何度も差し出した手は空を掴むだけで自分の情けなさに嫌になる。 「〜ごめん、また来る。」 そう残して姿を消した君、“また来る”と言ったものの、もう二度と君に会える気がしなくて…胸が痛い。 「頼音、ベットに戻りなさい。」 母さんの哀しそうな、優しい声が背中にかかる。 「…泣かないで。」 いつの間にか、凄く小さくなっていた…で、昔のように頭を撫でられる。 くすぐったいようで…安心する。 咽が締め付けられ、嗚咽だけが漏れる。 顔を両手で覆って、初めて気が付いたことがある。 ゆっくりと流れる…一筋の涙。 その涙に気づいた時、異様に哀しくなり、胸が痛い。 何で、世の中ってこんなにうまくいかないのだろう、どんなに思っても思っても届かず消え去る気持ちもあること、初めて知った。 この壊れたパズルのような俺達が、元の形に戻ることはあるんだろうか。 未完成のジグソーパズルのピース一欠片、なくなったように二度と完成はしないのだろうか。 それがよぎると、俺は今にも死んでしまいたいと願うだろう。 君は分かっていない。 どんだけ俺が君を好きか。
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