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91-ジグソーパズル 作者:夏麻

第1回   91-ジグソーパズル(真山 壱×牧ノ瀬 結)

 真っ白な天使の羽根が無数に舞い散っている
 美しい絵が、彼女の部屋に飾ってあった。

「このジグソーパズル…。」
 どうも見覚えがあった。羽根が美しい、その全体的に真っ白なジグソーパズル。
「あれ?覚えてないの?壱がくれたんじゃん。」
 頬を膨らまして少し怒っているように見える彼女はきっと、俺が覚えていない事に腹を立てたのだろう。それぐらい分かるさ、バカじゃない。
「結の…誕生日に?」
 違うよ。 間髪入れずに、彼女の声が重なった。
俺…送ったっけな?見覚えあるが、全く状況を覚えていない…。
頭を抱えて悩む、突っかかって出てこない。もう少しで思い出せそうなのに…と思うのは、自分に甘いのだろうか。
「『この綺麗な白い羽根のように、真っ白な羽根を持っている君が見えたんだ。俺の天使になってください。』」
 彼女が器用にホットケーキをひっくり返しながら、呟いた。
…その台詞はまさか…。
 どうも聞き覚えがある口調、言い回し。
「なーんて、今時くっさい台詞であたしに告白したのは誰だったっけかなぁ?」
 彼女の言葉にようやく思い出した、俺の消したい過去ナンバーワン。
「〜〜〜俺です。」
 敢えなく認める。 彼女に口で勝とうなんて無理な事、考えようとはしない。
勝ち誇った顔で彼女は焼きたてのホットケーキを俺の前に出した。
「でも、その言葉にやられたのは結だろう?」
 負けっぱなしも嫌だ。少しばかり反抗の意をみせた。…が、それは失敗した。
「〜壱、ホットケーキ没収。」
 少し赤くした顔を隠すように俺の前に置いてあった皿を、カタリと持ち上げ背を向けた。
「ゆーいー。」
 俺のホットケーキの危機に、彼女の服の裾を引っ張った。
「もう言わないから返して…。」
 すがる俺に、軽く笑って彼女は皿を机に戻した。
「約束、だよ。」
 指切り、と言わんばかりに小指を立てた彼女が可愛くて、思わず抱きしめた。
本当にあの時、俺の目には真っ白な、このジグソーパズルと同じような羽根が見えた事は、これ以上君を怒らせたくないから、言わない事にしておこう。
 でも、覚えておいて。
いつまで経っても君は僕の天使…だからさ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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