二人手を繋いで“永遠”を誓い合った。 そんな事、敵うはずのない事だって知ってるけど、俺等二人は信じてた。 キミが、俺の前から姿を消すまでは…。
夏、君の好きだった向日葵が、大きな花をつけ太陽へと向かっている日。 キミがいなくなって三度目の夏。未だにキミがいなくなって初めて迎えた夏の事、鮮明に思い出す事が出来る。 キミがいた夏より、その年の事の方が思い出せるんだ。 毎日、毎日泣き崩れ、キミを思い出しては何も出来なかった事を悔やみ、キミを忘れた日は一日足りとなかった。 「愛してるよ。」 キミが俺に残した最後の言葉…あれは今日よりも暑い夏の日の事だったよな。 「花火したかったな、今年の夏も。」 キミが呟いたその言葉に、“来年があるじゃん。”なんていう下手な慰めは出来なかった。 「そうだな。また、機会はあるさ。」 声を振り絞りその言葉を伝える事でいっぱいいっぱいで、それ以上の事は何も言えずに横目でキミの様子を窺うと、淋しそうに笑って俯いていた。 「そうだね…。」 その一言が、沈黙の幕を切った。数分間、キミの担当の看護師がようやくこの無言の時を掻き消してくれた。 「検査になりますので、お見舞いの方はお帰り願います。」 天使の微笑みの欠片もない女性は、それだけ言うとさっさとキミを連れいていってしまった。 一人の超された俺は、先程のキミの笑顔を何度も何度もの頭の中で、バカみたいにリピートする。 “機会なんてもの、無いよ”そう訴えるかのような表情、キミはそんな顔をするような女の子じゃなかった。 元気で明るく、いつも人を気遣う…そんなキミが大好きだ。 「景、あたし花火やれなくていいや。」 キミが唐突に吐き出した言葉に俺は、笑って“そう?”と答えてみせた。 「その分だけ、景と過ごしたいから。」 キミが照れたように頬を赤く染めながら、呟いた。それは小さな小さな声で。 「美羽…。」 「愛してるよ、景。」 儚く微笑んで、俺に愛の言葉を告げたキミに何も返すことなく…それはキミと交わした最後の会話となってしまった。 その日の晩、キミは静かに息を引き取ったね。…でも、幸せな…とても幸せな笑顔で。
あれから三年経った今も、俺等は変らず恋人同士だ。 夏には線香花火に火を灯し、冬には共に暖めあって。 キミに振られる事は絶対無いし、しばらくは俺もキミを振る気はないから…。
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