一向は北へと進んでいった。その四人の足取りは決して軽い物ではなかった。 全員が寡黙に、そして暗い表情で唯歩くのみだった。
「……………」
無言。沈黙。寡黙。
「…………」
「あああ〜〜!!!もうっ!!!いや、この雰囲気いやっ!!」 静寂を切り裂いたのはリチェだった。 「私ネェ、ダメなのよ!!こういう重苦しい雰囲気!!ダメなの!!ね、何か喋りましょう?落ち込むのもわかるけど…ね!?レイちゃんだって言ってたじゃない!『クラーネット機関を潰して』って!フランツ君も同じ気持ちよ!皆同じ気持ちね!だから…私達がこんなに暗くてどーすんのよっ!!」 リチェが明るく振舞う。無邪気な笑み、こぼれる金色の髪。 「…そうですね!」 反応したのはエルだった。 「すみません。本当なら僕が率先するべきなのに…僕は男だから強くあるべきだったのに…ごめんなさい」 「あら、そういえばエルって男だったわね」 「ク、クレアさん…!」 「クスッ…冗談よ」 クレアもやっと笑った。妖しげな微笑みはエルの心を和らげた。 「…ミスター・オリヴァーは仮にも男だったな……」 やっとユリアも発言した。
「…暗い雰囲気やめましょう!!みんな、今まで犠牲になって行った人たちの分も…強くなりましょう!!」 「そういうエルが一番強くなりなさいよー!」 「ハ、ハィ……」
********************************* ここである民宿に泊まる事にした。 「四人です」 「ああ、ハイハイ。あ〜ごめん!あいにく部屋が二部屋しか開いてないや!ま、いいでしょ?女四人!」 「え…?」
どうやら店主はエルを女だと勘違いした様子で、部屋割りを『エル・クレア』で一部屋、『ユリア・リチェ』で一部屋に決めてしまった。 「あ、あの…」 エルが女だと間違われても無理は無い。 童顔女顔、それに長い睫毛、優しく頼りなさそうな雰囲気。やはり傍から見れば女で、しかも男に襲われるだろう。
******************************** 【バタン…】
エルとクレアは一つの部屋に泊まる事になった。 「あ…あの…その…」 「…プッ…アハハハハッ♪ね〜ぇ?エル…」 クレアが上着を脱ぐとエルは動揺し、それに反応しクレアは笑った。 クレアの膨らんだ胸に細い腰。ウェイビーロングヘアーの茶色い髪。 端整な顔立ち。
やはりここに来て初めてクレアをちゃんと見た様な気がした。
「…エル…」 「はい?」 クレアがエルの耳元で囁いた。
「………変な気、起こしちゃダメよ?」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ボン!!!と言う音がしたかと思うと一気にエルの顔が真っ赤になった。 初め意味がわからなかったエルだが徐々に徐々に理解し、そして結論に達した時エルは異様なまでに動揺していた。
「へ、へ、へ!?変な気って…変な気って…」 口をパクパクさせそれ以上言えないようだった。
「プ…プッ…アッハハハハハ!ジョーダンよ!ねぇ、エル?」 「ハイ?」 「…守ってよね…あたしのこと」 「え…?」 「…ごめん、なんでもない!」
少しだけ、少しだけ、クレアが哀しそうに見えた。
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