――とあるしなびた町。 「お母さん、水もって来るね!!!」 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 ある少年が、病気である母親のために、何キロも先にある井戸の所まで走って行った。 『・・・・フランツ・・・・・タベタイ・・・・タベル・・・・・・・・・』
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「暑いですね〜・・・」 「そりゃ、クラーネット機関がどこにあるかなんてわからないもの!探していくしかないじゃない?ちょっと位の遠回りはあるわよ♪」 リチェの言うとおり、クラーネット機関が具体的にどこにあるかなど誰も知らない。それにたびたび場所を変えて襲うため、基本震源地までもわからないのだ。 「にしてもさぁ、エル?あんた、機関の場所知らないのによく旅してるわね?」 「ハイ・・・・・・」
「町だ」 ユリアが事務的に言う。 砂漠のように古くて砂埃が強い小さな町。 「ここで一休みさせてもらおうかしら〜〜〜?」 リチェが能天気に言う。 「・・・あの・・・でも、この町ちょっと古いですし・・・、人たちが困るんじゃないんでしょうか?」 クレアが言った。 「ミス・フローレンス、どういうことだ」 「いえ、この町、見る限り・・・こういっちゃ失礼ですけど、裕福な人がそんなにいないっていうか・・・言い方変ですね、人々が毎日困ってるような様子なので、泊まるなんて悪いんじゃ?」 クレアの言うことはあっていた。 確かに、お世辞にも格好がキレイな人はいなく、誰もかれも、貧乏で粗末な身なりをしていた。 「そうねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「・・・あの・・・・・・・、どうしましたか?」
少年の声。 振り向くと、エルより2つほど年下の少年が立っていた。 「あのっ、行く所がないのなら、僕の家に来ませんか?母も歓迎してくれます」 「あらっ、本当〜〜〜〜!!!???助かるわぁ!!」 「ちょ、ちょっとリチェさんっ!あの、無理しなくていいんですよ?」 「大丈夫です。あ、ボクは“フランツ=ドーゼル”です」 「ボクはエル=オリヴァーです♪」
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――フランツの家。 「お母さん!お客人だよ!」 『・・・・・・キャク・・・・・・・・・・・・・・・・・・キャク・・・』 「あ・・・お母さんは、最近少し変なんだ。でも、それは最近の流行り病なんだ」 「流行り病?」 クレアが聞く。 「はい。ここ最近、意識がもうろうとしておかしなことを言う病気が流行ってて・・・最終的には腐敗してしまうのですが・・・ボクはあきらめてません。死んでしまう病気でも、母は治ると信じてますから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・姉さん、“寄生型”ね」 ユリアが言う。 「・・・そうね・・・・・これは寄生型ね」 「・・・・寄生型?それってなんですか?」 クレアがリチェに質問する。 「・・・人間に寄生するマグのことだ。寄生型マグは、人の魂を吸い取り人の体を腐敗させる・・・邪悪なヤツだ」 「えええっ!!・・・・この町に、マグが流行ってるって事?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ミスター・ドーゼル。この町に・・“マグ”はいるか?」 ユリアがフランツに聞いた。 「マグ・・・聞いた事はあります。隣町で騒ぎになっている妖怪でしょう?ですが、この町にはありません。この町は平和です」 「・・・・・ちっとも平和じゃない」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
そのとき。
『ギイイシャアアアアアアア!!!!』
《!!!!!!!!!》 「おっ、お母さん!?」
フランツの母――いや、フランツの母の中にいるマグが、暴走し始めた。
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