「…ほら、泣かない」 櫟の優しい声になだめられて。 やむ事のない涙は、溢れるばかりで。 「…あーっ!困った」 「ごめ、御免櫟…っ」 「何に対して謝ってるの?…僕は別に怒っても居ないけど?」 「迷惑、でしょ…?」 「大して迷惑じゃないよ」 あはは、と櫟は笑って答えた。 櫟は優しい。 本当は迷惑なはずなのに、笑って許してくれる。 あたしがこんなに優しくして貰って良いのだろうか? 「…水澄さん、バーさ、何時から?」 「10時からだよ」 そっか、と笑った 自然とつられて笑みがこぼれた。 …雄二、好きだよ。 いつかちゃんと伝えるから。 …待っててね、今は未だ言えないけど。 「櫟、…有り難う」 「いえいえ。御礼を言われるほどじゃないけどさ。」 そう言って照れるように櫟は頭を掻く。 「いや、ほんと迷惑掛けたね」 「…普通は好きな子の傍にいたいと思うものだけどな」 「〜っあ!」 「今思い出したって顔だね、さっきも言ったじゃん、水澄さんのことが好きだから幸せになって欲しいって」 人の気持ちを利用した?…そうだね、そうなるんだろう あたしは最低な事をした、筈だ 「櫟、御免」 「え?」 「なんか、気持ち利用するような事して」 「ああ、…別に、好きな人なら利用されても良いと思うけどね、そういうもんだよ」 櫟は悲しそうに笑った
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