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悲痛 悲恋 作者:綺依 憂倭

最終回   5
「ねえ」

久しぶりの彼の声
…一番 今聞きたくない声だ

「今幸せじゃないでしょ」

そりゃそうだよ
ずっと そうだしね
あたしには資格がないの

「………なんで俺に幸せになれって言っときながら自分は幸せにならないの」

無理だから
無理だから
駄目だから
駄目だから

みんなの幸せがあたしの幸せだよ
と 
言ってみる
強がり 
強がり

「なれる訳無いじゃん、資格無いもん」

俯き加減で言った
…顔が見たくなかった
自分の顔を見せたくなかった

「何、幸せになるのには資格が必要なわけ?」

あたしは苦笑した
彼の唐突な意見に
失笑した

「あたし以外の人は必要ないけどね」
「なんでそんなこと、言うの」

悲しげに呟いたかれの、こえ

「…っは…あたしはそうだから」
「悲しすぎるよ…………」

悲しすぎて良い
これが あたし
現状 もうこの生活に慣れた
環境に慣れちゃったな

あたしは自分に対して
厳しくもあり
甘いからね
と苦笑した
彼はそれでいいんじゃない と言った

「自分にスパルタだから あたしは」
「可成りキツいな、過保護な友達作ったら?」

はは 要らないよ
とまた苦笑混じりの会話

彼があたしをきつく抱きしめる
いきなりの事に 酷く吃驚する

「まだ俺お前好きなんだけど」
「……………だから何よ 今更だわ」

苦笑して 苦笑して
嘲笑って 嘲笑って

「より戻す気 無いから」
好きだけど、と付け加えて
心の底から 笑った

「そう言うと思ってたし」

彼も心底面白そうに笑った
其れじゃなきゃ お前らしくないしね
と 付け足された

少し不機嫌になったが
久々だ 中一ぶりだろうか?
こんなにも彼と話したのは

「…あたしはずっと苦しむんだ」

ぽつりと呟くと
叩かれた しかも
思い切り

「いったあ!」
「お前何言ってんの。馬鹿じゃん」

馬鹿だよ
と開き直ると
また叩かれた

「お前も幸せになるんだよ」

その言葉に 笑った


 
 
 
 いつしか

 かのじょはいった
 
 あいがあったという じしんがあるから

 あたしはそれでまんぞくだわ

 それだけで あたしは うれしいわ

 それだけで ささえになる

 
 
 

あたしは彼女を尊敬していた
して、いる
彼女は綺麗事を吐く人だと有名だ
でも 正当論だと思う

……………人のとらえ方だからしょうがないの
前も彼女は言った


 
 
 
 いつしか かのじょはこういった

 だいすきなひとが

 ひとりでもいいから

 だれでもいいから

 ひとりでもいいから
 
 あたしのことをしんじてくれているなら

 そのじじつだけで

 とても うれしいし

 とても とても

 あたたかだわ

 


「いいの あたしは幸せになんなくていい」

彼女も言ってた

 自ら望めばいい

    苦しむか 楽でいるか

       あたしは 苦しむ方を 選ぶ



言っていた

「あたしさあ あんたのこと大好きだよ」
 
 
 
 
 
 でもね 
 
 
 あなたにはあたしはにあわないよ 
 
 
 
 あわないよ
 
 
 
 
 
 
 うんめいのあいてじゃなかったんだよ 
 
 
 
 
 
 
 あなたにあたしなんかがかのじょになったら
 
 
 
 
 
 
 
 ほんとうに だめだとおもう



かれは ないてた



悲恋 悲恋 悲恋

これは悲恋 ねえ

さいごはあたしが 彼を泣かせた

そのまえは彼が あたしを泣かせた


悲痛 悲痛 悲痛

悲痛 だね

悲しんで 苦しんだ

悲しんで 痛かった

あたしと彼は
友達 だ
良い友達だとあたしは心底思う
付き合ってるよりも 大分 良い

ねえ これで良かったんだよね?

沢山泣いた
沢山傷付いた
きっと此からもそうなんだと思う

でも 今は 少し幸せになっちゃったよ
此ぐらいは 許してくれるよね? ねえ? 神様
 
 
 
 
 
 
 
 ――――――――――――――――了
 
 
 




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