■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

悲痛 悲恋 作者:綺依 憂倭

第3回   3
― ムカツク
苛々する
なんでそんな淡々としてるわけ?
………………… もう やだよ

…… 今は 後悔してる
別れた日から
避け合い 話さなくなって
……やだな こういうの
そんな 気持ちが 芽生えて 来て

まだ彼のことを
…愛してる 恋心を抱いている
自分に 気づいて
気づきたくなかった
気のせいだと思いたかった
これは 只の意地張りなんだけどね

言いたくなった 言葉を 最後の
最後の 言葉を 言わせてください
これだけは 神様も
 許 し て く れ る よ ね ?

「ねえっ」

廊下で 彼を 呼び止めた
彼は反射的に
振り向いた 顔が歪んだ
――――・・・ 辛そうに

嫌な顔ではなかった
寧ろ 悲しそうな

「今まで有り難う。本当に有り難う、楽しかった」

一方的に 言葉を発する
彼に口挟まれたら 
…間違いなく あたしは 壊れる
彼の声を聞く前に 聞く前に
言い終わりたい 笑顔で居たい

「最後の我儘 聞いて、欲しい」

彼は あたしの声が涙声なのを察して
頷いた 声は発さなかった

「大好きだった 今でも 大好きだから」

彼の目が大きく見開かれる
…構わず 話し続けた

「だから だから――――・・・」

 
 
 
  ずっと くるしむ あたしのかわりに

  
 
 
 
  ずっと ずっと ずっと

 
 
 
 
  たくさん しあわせに なってください

 
 
 
 
  いっぱい いっぱい しあわせになってください
 
言い終わった後 彼は
視線を ゆっくりと 上げ
あたしを 見つめる
口を開いた

「…もう 苦しまなくて良いよ」
 
 
 
 
 
   もう 存分に 苦しんでたじゃん

 
 
   もう 苦しまないで お願い

 
 
 

 
駄目だった 彼の声を聞いて
涙が出た
廊下の真ん中
みんな見てるの分かってるのに
泣いてしまった

あたしは 頷くことも出来なかった

彼は 優しく見つめてくれた
あたしは見つめ返すことが出来なかった

泣いてた ひたすら
泣くことに 必死だった


 
 
 
 かれは あたしのことが すきだっただろうか

 さいごまで いとおしくおもってくれただろうか

 いまでも いとおしくおもってくれてるだろうか


 


有り得ないこと考えながら
泣き続ける 
ずっと ずっと
誰に見られようとも
怪訝しく見られても

… もう どうでもいい

彼を愛おしく 思ってる気持ちがあるから
ねえ あたしは本気で好きだったよ
愛おしかったよ

狂わしく 駆られる 衝動
彼を愛してるから
気持ちが こんなにも あたしを
狂わせる 狂わせる
ぐるぐる
ぐらぐら 
 ・
 ・
 ・
 ・

始業前チャイムが鳴った
流石にやばいと顔を上げた
彼は未だ居た
あたしの 傍らに
しゃがみ込んで
微笑んでた

「よしよし」

そんなこと言って あたしの頭撫でる
…好きだな
こんな
そんな 君が

一時は 恨んだし
憎んだ 物凄く
だけど今は こんなにも愛おしい

「お願い…幸せになってね」
「お前もね」

あたし?
あたしは無理だよ 無理だよ 無理すぎる
駄目だよ あたしはずっと

 
 
 
 
  みんなのために くるしまなきゃ
 
 


「御免ね あたしは幸せになれない」
立ち上がって 涙拭いた
最後の 強がり
涙でぐしゃぐしゃな顔を
無理して 笑んで見せた

「有り難う 今まで」

大好きだよ

なんて呟いて、あたしは教室に戻った
先生に 保健室に行かせて貰った
保健の先生は
何も言わず 泣かせてくれた

悲恋 悲しい恋

ねえ あたし達はお互いに幸せでしたか?
幸せでしたか? 違いますか?

…………… 違ったんだろうなあ
実感持てなくて
苦しくて 何処か窮屈で

あのさあ なんかもう
恋愛って面倒臭いね
疲れるね
傷付くね

泣いた 泣いた
涙枯れる程 泣いた

叫んだ 訴えかけた
声が枯れる程 叫び、訴えかけた

 
 
 
 
   すきだよ と

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   あいしてるよ と


ずっと ずっと 永遠に
愛してる 好きでいる

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections