「消えてもらうって・・・・」 シエルは、突然そのようなことを言われてびっくりしていた。
『ククク・・・言うこと直球だなぁ。まぁ本人に言わせてみれば殺される理由に全く身に覚えはないんだから、あれじゃあ驚いて当然だろな―――』 ヴィンはエヒィが言った言葉を聴いた瞬間に、シエルとか言う女に少しだけ哀れだなぁと思っていた。それに、あの女の隣にいるあの男(ウォルの事)、さっきから俺たちの事睨みすぎだっつの―――。
ウォルは目の前にいる3人を睨んでいた。 当たり前と言ったら当たり前だろう。目の前でここにいた兵士たちが皆この場からいなくなってしまったのだから。 『もう少し時間さえ稼げばあいつらがきっと来るだろう。 だが、その時間稼ぎをどうするかだな。なんだか相手の女は俺の隣にいる女に「この世から消えてもらう」と言われていたからな、あからさまに怯えているだろうな。 もうすでに怯えているけどな。 俺にはまったく関係がないんだが、そう言っているうちにまた怪我でもされたらあいつに俺が殺されちまうし・・・・。』
ウォルがいろいろと考えていると、目の前の三人の後ろに何か影が動いた。 それを確認したウォルは心の中で『ハァ〜』とため息をついた。
「おいお前ら。いったいここに何のようだ?」 突然言われて3人は驚いた。が、すぐに冷静になり一人の男が答えた。 「別に、ただ俺らは仕事をやったまでだよw」 「なら、お前達に命令したのは誰だ?」 「それは言えねぇーな。あ、でも条件を飲んでくれたら教えてやってもいいぜ?w」 「・・・・条件だと?」 「あぁ。そうだなぁ、とりあえずあんたが抱いているその子をこっちに渡してもらおうか?」 「なぜだ?こいつはただの料理人だぜ。お前らがこいつを連れて行っても何の得にもなんないんじゃないか?」
『うーん、なんかこいつ頑固だなぁ。なぁエヒィ、こいつも殺しちゃう?』 『あんたねぇ、そんなことしたらあの人に殺されるわよ。それに、あの子もただ捕まえるだけでしょ。』 『でもよぉ、あいつ俺の言うこと聞いてくんないし、ずっと睨んでくるし(泣)』 『そうよね、どうしましょ。ヴィンはどう思う?』 『俺はさっさとこの場所から帰りたい。』 『相変わらずだなぁお前。』 『・・・・五月蝿い(怒)』 『わ・・・悪かった・・・』
「・・・・?」 おかしい。さっきから誰かに見られている気がする。 「ヴィンどうしたの?さっきから周りを気にしているようだけど。」 「いや、さっきから変な感じがするんだが・・・・(気のせいか?)」
「いや、気のせいじゃないぜボウス。」 「「「!!!」」」 ヴィンたち三人は後ろを振り向いた。 そこにはこの国の騎士だろう、鎧と剣を装着している人が立っていた。 男は3人をにらみつけるように鋭い視線を向けていた。 「ウォル、いつまで縮こもっているつもりだ?」 「んなこといったって俺こいつを抱えてんだけど・・・」 「だったらメヒィにでも頼めばいいだろ」 「オレあいつ苦手なんだよなぁ」 「だぁ〜れが苦手ですってぇ〜(怒)」 「「「!!!!」」」 3人はさらに驚いた。 今度は、ウォルとシエルの隣に一人の女の人が立っていたからである。 「一言言ってくれれば、すぐにでも来てあげたのに(笑)」 「・・・・ボソ(言えばどうせすぐに怒鳴られるんだよなぁ)」 「なぁ〜んか言ったかしらぁ?(怒)」 「え?あ、いやぁ(汗)・・・・」 「メヒィ、そろそろやめてやれ。敵が暇してる」 「(ホ・・・)」
『なんか俺たちばかにされてないか?』 『そうねぇ・・・。でも、相手にとって不足はないんじゃない?w』 『まぁな。それは言えてる』 『私たちも、本当に暇だから少しお相手してもらおうかしら』 『賛成ェ〜w』
「取り合えず、彼女はこっちねぇ」 そういって、おもむろにシエルを抱きかかえたメヒィ。 「ふぇ?!」 突然のことに、シエルは変な声を出してしまった。 それを聞いたメヒィはビックリして目を見開いていたが、すぐに笑顔になった。 「クスクス、安心して大丈夫よ。ウォルよりは大切に扱いますからねw」 「え?あ、はい・・・(恥)」 シエルは、自分が変な声を発したのに気づいて、急に恥ずかしくなってしまった。
ウォルは取り合えず彼女をメヒィに任せておけば大丈夫だと思い、立ち上がった。 そして、相手に向かってしゃべりかけた。 「待たせたなお前ら。俺様が自由になった今、お前らを倒してやるよ!」 「ウォル、やりたい気持ちはわかるが、お前を守るのが俺の仕事だ。大人しくしてろ」 「へぇ〜俺たち3人を1人で相手をするってか?俺たちも随分となめられたもんだなぁ」 「そうね。たった1人の騎士に何ができるって言うのかしら」 「俺を甘く見てると、痛い目にあうぜ。それに比べてそこのボウズは大人しいな。びびってんのか?・・・・それとも、何か作戦でも考えているのか?」 「・・・・・」 「無視か。無視は戦いにおいて、肯定ととられるぜ。」 そういった瞬間、剣を鞘から抜き、ヴィンに切りかかった。 ガキィィン!! 剣と剣がぶつかり合う音。 「なかなかいい腕してんじゃん。でも、それじゃあ俺たち3人は倒せないぜ!」 「・・・・」 ブラッドは無言のまま剣を構えていた。
「悪いけど、そろそろ時間なんだよ。」
すると、突然風が吹いてきた。 ブラッドはチッっと舌打ちをして、バルから離れた。 (もちろん離れて、ウォルの隣まで下がってきた)
「あぁ〜あ。せっかく良いところだったのに、もう時間?」 「まぁそう言わないでおくれ。僕にもいろいろとあるのさ。」 「あっそ・・・」
『だれなんだこいつは。突然風が吹いたと思ったら普通にあいつらと会話してるし・・・』 そう、突風が吹いたと思ったら、1人の男が立っていたのだ。 ウォル、メヒィ、ブラッドの3人は、シエルを守るかのように前にたちはばかった。 もちろん、メヒィとブラッドはウォルの前に立っている。
「そんなに警戒をしないでおくれ。もうここから離れるつもりなのだから。」 「随分と勝手なことを言ってくれるじゃねえか。」 「おや、そんなことはないと思うけどね。」 「なんだと・・・」 「そちらの騎士さんは、少してに力が入らない様子だがね。」 「なに!ブラッド、それは本当なのか?!」 「・・・いや、たいした事じゃない。」 「力が入らないんだな」 「・・・・あぁ」 「!!!」 「ほらね、僕の言った通りだろw」 「・・・・チッ」 「さて、ここにもう用はない。さっさと引き上げるぞ。」 「ですが、彼女のことはどうしますか?」 「まぁ、また考えるさ。」 ウォルは彼女と聞いてハッとした。 そうだ、こいつらの狙いは俺でもあるが、第一は彼女だ。 ここで戦いになれば彼女に被害が及ぶかもしれない・・・・。 「フフ、頭の回転が速いんだねウォルは。好きだよそういう人は。」 「・・・俺は嫌いだけどな。」 「まぁいいさ。彼女は君に預けておくよ。でも、いずれまた迎えに行くつもりだから、そのときは、お相手いたしましょう。」
そういった瞬間またしても風が吹いた。 4人は目も開けられないほどの突風をなんとかやり過ごしていた。 メヒィとブラッドはウォルを守るように。 そして、ウォルはシエルを守るように。
風が止み終わり、ゆっくりと目を開け彼らがいた場所を見たが、 彼らは跡形もなく、その場から消えていた。
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