ここは、とある古い古城。 外から見ると、長い年月誰にも手入れをされていないのだろうか、壁などが風化してボロボロに崩れている。 そこに2人組みの男女が現れた。 「しかし、何で俺たちがこんな薄気味悪いところに集められるんだ?」 「まぁまぁ、しょうがないんじゃない。あの人の趣味なんだから。」 「でもよぉ・・・・・これはいくら何でもひどすぎじゃねぇか?」 そう言って古城の壁を触った。面白いほどにボロッと粉々に崩れた。 「ここ、マジであぶねぇって。中に入ったとたん屋根がおっこってくるって!」 「さっきからギャーギャーうるさいんだけど。」 大きな声を出していた彼の後ろから、小柄な少年がムスッとした声で言ってきた。 「あら、ボウヤも今来たの?ちょうどいいから一緒に行きましょ。」 彼女はスタスタと古城の門をくぐっていった。 「・・・・・」 少年は無言でその言葉を聞き、彼女のあとに歩いていった。 「あ、おい!俺一人置いてけぼりかよぉ〜。」 彼は一人残されてしまったので、走って彼女たちのそばまで行った。 「きっとあの人はもう中で待っているはずよ。」 「でも、中って言ったって壁が壊れてどこが入り口かわかんないじゃんか。」 「・・・・・ここ。」 と、少年は指をさした。彼は「え?」と少年が指さした方向へと顔をむけた。 「・・・なにあれ?」 彼女もまた目を見張った。なぜなら、周りはボロボロの壁なのに、それに囲まれるように真新しい扉があったからである。 「いかにも、あの人がやりそうな演出ね。」 彼女はそういいながら扉を開けた。 中へ入ると、目の前は王座の間だった。三人は、王座の前に立っている者を見たとたん、先ほどのような明るい顔ではなく、暗く威圧感がある顔へと変わった。 「やぁ、よくきたね。さ、そんな所にいないでもっとこっちにおいでよ。」 彼はそういうと、入ってきた3人を手招きした。 3人は逆らうことをせず、普通に歩いていった。 歩いて行ったのはいいのだが、4人ともじぃーっと黙っていた。 そんな緊迫した空気の中、4人の中で一番小さい少年が一言いった。 「カイ様。今日はどのような用事があって我々を集めたのですか?」 カイと呼ばれたものは、ニッコリと微笑んで、 「今日は君たち三人に、ちょっとイジワルをしてほしくて呼んだんだ。」 3人は「「イジワル???」」と声をそろえて言った。 「うん、そう。変装して少し混乱を起こしてほしいんだ。」 3人は訳が分からない顔をしていた。 「・・・どのような場所に侵入して混乱を起こすのですか?」 一番呑み込みが早いのだろう。3人のうちの1人の彼女が言った。 「さすがはエヒィだね。呑み込みが速い子は好きだよw」 彼女ことエヒィはありがとうございますと小さく言って頭を下げた。 「場所はミーティア国の王族が食べる食事の場所だよ。混乱というのは、部屋の中にいる兵士を5・6人殺してくるだけでいいんだ。」 「なんで兵士だけを殺すんだ?王族の食事の場所なら、王族も殺しちまえばいいんじゃないか?」 「う〜ん、そうしたいのは山々なんだよバル。でもね、そうしちゃうとあの子が怒っちゃうから。」 あの子といわれても、さっぱり分からないはバル、「う〜ん」とうなりながら考え込んでしまった。それを遮るかのように少年がカイの方を見ていった。 「しかし、変装といっても中に入るのには王族のものか兵士かメイドぐらいですよね?」 「そうよね」とエヒィは頷いて少年の意見に同意した。 「うん、確かにその3つに限られてしまう。だから僕のほうで何に変装するかは決めておいたから大丈夫だよ。」 「ならいいのですが。」 少年は納得した。エヒィも頷いた。相変わらずバルはまだ考えているのか、顎に手を当てたままずっと考え込んでいた。 「バル、混乱を起こせばあの子は分かるはずだよ。多分一番びっくりした顔をするはずだから。」 「え!?本当ですか?うし!そうと決まれば早速出発しようぜ!!!」 「お前、さっきのカイ様の言葉聞いてたか?いまから何に変装するか言うって言ってただろ。」 「無駄よヴィン。バルは考え事をしてる時は何を言っても覚えてないんだから。」 バルはエヒィに言われて、「なんだよぉー」とブーブー文句を言っているが、それをスルーしてカイのほうへと体を向け、 「それでカイ様、私たちは何に変装すればよいのですか?あと、やるタイミングは?」 さっきまでニコニコしていた顔が急に鋭い目線を向ける顔になったのを見た3人は、同じように真剣なまなざしを向けた。 「それはね――――。」
「やったーー!!」 厨房に明るい声が響いた。声の主は満面の笑みで完成したものを見ている。 「おぉ〜?やっと完成したか。お前にしてはずいぶんと時間がかかったなぁ」 そういってきたのはフールであった。彼はすでに自分の仕事は終わったので、さっきからいすに座ってシエルの仕事を後ろから見ていたのであった。 「だって、始めたのが遅かったんだもん。」 そうなのだ。栽培所であった青年のせいで帰るのが遅くなってしまったのだ。 「もしかしてもうデザート運ぶ時間だったりする?」 「ん?後5分ぐらいだぞ。あぁ、そういえばお前料理運ぶんだっけ。」 「うん。この格好でいいよね?」 「いいんじゃねぇか。どうぜお前のケーキのことだから説明できるやつがいたほうがいいんじゃねえか。」 「でも、私が陛下のデザートを運ぶなんて・・・・・もう緊張しちゃうよ。」 「お前緊張すんの早いなぁw」 そういうとフールはシエルの髪の毛をグシャグシャをなでた。 「ちょ、なにすんのよ!」 シエルは反撃しようとフールのほうへ手を伸ばそうとしたら、 「おい、シエル。そろそろ運んでくれ。」 と声をかけられてしまった。私はフールに反撃しようとした手を引っ込めて、デザートのお皿を持った。そのままメイドさん達の方へと歩いていった。 「ごめんなさい、遅くなってしまって。」 「いいんですよ。」 ニッコリと微笑んでくれて、シエルも笑顔で笑った。すると後ろから、 「お〜いシエル〜。へましてこけんなよぉw」 「な!・・・こけないわよ!!!」 もう!何でそんな事いうのよぉ。周りのメイドさんたちも笑ってるし、恥ずかしい。 「フフ・・・。さあ、行きましょうか。」 そういって私たちは厨房を後にした。
「しかしウォルも大きくなったものだのぉw」 「父様、昨日もそのせりふを言っていましたよ。」 「おや?そうだったかのぉw」 「あらあら、あなたってばいけませんねぇ。」 「ワッハッハw」 「・・・・・・。」 グロウは思った。「この両親はものすごくのろけてるなぁ」と。 一人でそんなことを考えていると、ウォル様と目が合った。 『見てねえで助けろよ』という目を向けられた。 『無理ですねw』という意味で笑顔を向けた。 ウォルはグロウにそんな顔をされたのでムスっとした顔で紅茶を飲んだ。 「あら、そろそろデザートでも食べましょうか?w」 ウォルのお母さん、シェリが一言言った。その言葉を合図に中にいた数人のメイド達は廊下へと出て行った。それと入れ違いにデザートのお皿を持ったメイド達が入ってきた。その中にはもちろんシエルの姿があった。
シエルが中へ入る少し前、廊下ではこの国の新しい陛下の話で盛り上がっていた。 「ねぇねぇ。今日って確かあのウォル様がいるんだよねw私初めて会うからもう緊張しちゃうよぉ。」 「あんたねぇ、私たちの仕事は料理を運んで食べ終わったらお皿を下げて部屋を退室するだけなんだから、そんなに緊張してもただの空回りよ。」 「そうそう。それに私たちじゃなくてシエルちゃんがウォル様のお皿を運ぶんだから、あんたが緊張しても意味ないよ。ねぇ〜シエルちゃん(笑)」 メイドさん達の話をボーっと聞いていたシエルは、急に話を振られて「え?」と聞き返してしまった。 「あら?もしかしてシエルちゃん緊張してたの?」 「あ、大丈夫です。少しボーっとしていただけなので。」 「んん?もしかしてウォル様のこと好きななおぉ♪」 「えええ〜〜!!!」 シエルはそんなことを急に言われて、お皿を持ったままオロオロと慌ててしまった。 「あやしいわねぇ〜(笑)」 「い、いや、そんなことありませんよ。」 そんなことをずっと廊下で話していたら、後ろから声をかけられた。 「あなたたち。陛下たちがいらっしゃるお部屋の近くなのです。私語は慎みなさい。」 「は、はい!申し訳ありませんでした。」 「わかったならいいんですよ(笑)シエル、あなたもはっきりと物事は言いなさい。そうしないと今みたいに質問をずっとされることになりますからね。」 「はいw」 今話していたのは、メイドさん達の一番偉い人だ。名前は確かレイラさん。 とても仕事には厳しい人なんだけど、普段はとてもやさしくて何でも相談できる人なんだよねwたまに相談に乗ってもらっているんだ。 「シエルはまだウォル様にはお会いしたことがないのよ。だから知らなくても当然のことなのよ。」 「あら、じゃあさっき言ってた事は本当だったのね。」 「だから最初からいってたじゃないですかぁ(泣)」 「あははwごめんごめん。」 そう話していると、部屋の扉が開いた。 「デザートのほうよろしくお願いします。」 その言葉を聴いて、各自持っていくお皿を持って中からメイドが出てきたら、入れ違いに入っていった。私は、一番後ろについて歩いていった。
私は入った途端、お皿を落としそうになった。 なぜなら、私が運ぶはずの陛下のところには昼間であった、あの少年だった。 思わず私は「あっ!」と声を出しそうになったが、その言葉を飲み込んで何もなかったかのように振るまい、そのままデザートのお皿を陛下こと、ウォルの前のテーブルに置いた。
「おや?君は確かこの城で働いているものではないね?」 ウォルの父、ジェインは言った。 私はお皿を置いてそのまま帰ろうと背を向けて歩こうとしていたときに声をかけられたので、びっくっりしてしまった。 しかし、黙っているのも失礼だと思ったシエルは、改めてジェインの方へと顔を向きなおした。 「はい。国の祭典などの行事のときだけレックさんのもとで臨時に働かさせてもらっています。」 シエルは敬意を込めてお辞儀をしながらそういった。 それを聞いたジェインとシェリはとてもやわらかい微笑を返してくれた。 シエルもつられて微笑んだ。 「そう、レックのもとで働いているの・・・。大変でしょうけどがんばって下さい。」 「ほぅ、あのレックのもとでか。あやつは少し厳しいところもあるが、とても信頼できる者だから、きっと大丈夫だろ。」 「はい!ありがとうございます。」 私はまさかこのお二人から、このように話しかけてもらえるとは思ってもみなかったので、ものすごくうれしかったw でも、さっきからなんだか胸騒ぎが起こる。この部屋に入ってきてからずっと起きている。 それに、誰かに監視されているかのように、じーっと視線を感じる。
シエルが不安を抱えたまま、料理の説明をしているとき、突如部屋の窓ガラスが割れた。 「バリーン!!!」 その音を聞き、この部屋にいた兵士たちは、陛下達を守るかのように、窓の方へと警戒態勢のまま進んでいった。 突然このような事態が起きたせいで、周りにいたメイドたちは、入り口の扉を開けて一目散へと逃げていった。 逃げる途中、キャーキャー騒ぎながら逃げるものもいれば、無我夢中で無言のまま逃げていくものもいた。 シエルは逃げなかった。いや、逃げなかったのではなく、逃げられないのだ。 先ほどの窓ガラスの破片が運悪く、一番近くに窓ガラスのそばにいたシエルに降り注いできたのであった。そのせいで、足にガラスの破片が刺さり、立ち上がることもおぼつかない感じになってしまったからである。 しかも、今私は新陛下であるウォルさまに手当てをしてもらっている。 「いい。」と断ったのだが、無理やり応急処置と言って、テーブルクロスを足に巻かれた。 なぜこのようなことが起きたのか、混乱する頭の中、一生懸命整理するために、私は頭をフル回転させていた。 そんな時、突然私の目の前に、1人の兵士と2人のメイドが立っていた。 私はハッ!と周りを見渡した。さっきから兵士たちが見当たらない。 先ほどまで私たちの目の前にいたのに、いなくなっていた。 そう、その場に残っていたのは、わずかな衣服の布切れと、兵士たちが流していたであろう血が床一面に広がっていた。私は思わずそばにいたウォルの腕をつかんでいた。 彼も何も言わず、ただ今の現状を一生懸命把握しようとしている。もちろん、目の前にいる3人にもにらみを向けることを忘れてはいない。 目の前にいる三人は、不敵な笑みを浮かべた。3人は肩に手を近づけ、変装をしていたのであろう。おもむろに服を脱ぎ捨てた。 そして、服が変わった3人をみて私は驚愕した。 夜の闇に溶け込んでいるかのように、真っ黒な服を着ていた。 3人の中の1人が私を見て、冷酷な雰囲気を含んでいる目で見つめてきた言った。
「悪いけど、あなたにもこの世から消えてもらう―――。」
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