この世界を大きく分けると4つの国に分かれる。 1つはシエルが住んでいるミティア国。この国は騎士と魔道士が共存する唯一の国である。 2つめはラウンド国。この国には魔道士はいないが、騎士の勢力は壮絶なものである。 3つめはグルーミ国。この国はラウンド国とは違い、騎士がいなく魔道士が多く存在する国である。 そして、4つめはリレイン国。この国は以前からほかの国と対立をしてきた。事あるごとにいろいろと裏で工作をしたりと、卑劣なことを繰り返してきた。
西暦19世紀末、ミティア国は雪が降って積もっていた冬が過ぎ、木には新緑の葉がつき、美しい花を咲かせる季節、春がやってきた。 春の季節になると、ミティア国では毎年この季節にお祭りを行う習慣があった。長い長い冬が過ぎた後だから、人々の顔もなんだか明るい顔になっている。 シエルは、広場に向かって急いでいた。 「おや?シエルちゃんじゃないか。そんなにあわててそこへ行くんだい?」 「あ、ナージュおばさんw今日は王宮のコックさんたちと一緒にお料理を作ることになってるのぉ。」 「王宮へかい?そりゃ急がないと、そろそろ準備を始めているころだよ。」 「うん!じゃあナージュおばさん、またね。」 「あぁ。がんばっておいで。」 ナージュおばさんとの会話を済ましたあとも、急ぎ足で王宮へと向かっていった。
そのころ王宮では・・・・・・ 「おい!お前らこれをやっとけって言っただろうが!!!」 「あ・・・あの・・・・・・すいませんでした!今すぐやってきます!!!」 そういうと、怒られていた2人は急いで用事を済ませるために部屋から出て行った。 「ったく!あいつらはまったくもってと言って言っていいほどに、仕事はできないし、作業もまだまだ出来やしね。」 そんなことをブツクサ言っている姿を他のコックたちが見て、ビクビクしている。 その場にいないくても、"殺気"が感じられることに本人はまったく気づいていないようだが。しかし、その怖ぁいコックは2つのものにはめちゃくちゃに弱かったりする。 まず1つは家族である。彼には妻と2人の子供がいる。家族の前では怒った顔など見せていないようだった。そして、もう1つは今だけ王宮の料理人として料理をしているシエルには弱かった。本人曰く、自分の子供に似ているからだといっている。 周りの者は、この重苦しい空気を換えてくれるシエルを心待ちにしていた。 すると、みんなの心の願いが通じたかのように、彼女がやってきた。 「す・すいません!少し遅れてしまいました!」 その声を聞いたコック達が歓声を上げはしないが、さっきまでのオドオドとした顔とは違い、喜びにの顔に変わっていた。 「いんや、5分ぐらいは遅刻に入らないよ。それに、少し準備が遅れて、料理はまだ始まっていないんだよ。」 そう聞いて私は安心した。今話しかけてきた人は、レックさんのお弟子さんのフールさんだった。私が王宮のお手伝いを始めたときからいろいろと話し相手になってもらっていた人だ。 「おい。お前ら!無駄口たたいている暇があったらさっさと料理が始められるように準備をしないか!!!」 「おぉ〜怖。んじゃ、俺達もはじめっかな。やらないとまたレックに怒鳴られるからな。」 「・・・なんか言ったか?(怒)」 「あはは・・・(汗)」 フールは(初対面で呼び捨てで呼ばれてからお互いに呼び捨てで呼び合っている)多分今の言葉を聞いて、早くしないと後でこってりと怒られてしまうと悟った。 「あの〜・・・レックさん。遅れてしまってすいませんでした。まだ準備ができていないって言うのは本当なんですか?」 「あぁ。だがもうできているはずだ。フール、シエルと一緒に前菜とスープの下ごしらえをしてくれ。シエル、来てすぐだが平気か?」 「はい!全然大丈夫ですよ。それじゃあちょっと荷物置いてきますね。」 そういって私は休憩室の方へと歩いていった。
「しっかし、本当にレックはシエルには甘々ですよね(笑)」 「別にそんなことはないが」 「い〜や、絶対に甘い!断言してもいいっすよぉ。」 「・・・お前はいちいち俺の気に障ることを言うな」 「そうすっかなぇ?♪」 「もういい。シエルが戻ってくるまで少しでも準備をしておけ。」 「へいへい。やっときますよ」 「返事は一回でいい。それに『へい』じゃなくて『はい』だ。」 「ハイ・・・」 ったく、本当に自覚がないんだからなぁ。まぁ俺には関係ないけど・・・ そんなことを考えながら料理の準備をするために厨房へと向かった。
そんな会話があったとは知らずに、のんきに荷物を置きに行っていたシエルはふと、動きを止めた。 「何だろ・・・。さっきから話しかけられてる気がする。声に出しているんじゃなくて・・・頭の中に直接響く感じに・・・」 どこからなんだろ?と、不思議に考えていた。しかし、私は自分の名前が呼ばれていることに気がついた。 「お〜いシエル。そろそろ来てくんないときついんだけどぉ〜」 この声は、きっとフールだろう。彼は確か今一人で厨房にいるはずだ。 「はぁい。今行きます!」 そういいながら私は厨房へと足を向けていった。 『でも、さっきの声はなんだったんだろ・・・。はっ!今はそんなことよりも料理を作ることに集中しなくちゃ』 気持ちの区切りをつけながら私は足早に歩いた。
そのころ王宮では・・・
「ウォル様。そろそろお召し物を着ないとお時間が・・・」 そういったのは、ウォルの側近であるグロウである。彼は側近でありながらもウォルが最も信頼するものであった。 「グロウ、今ちょうど奴から連絡があった。なんだかうまく行かなかったようだがな」 「え?あの方がやってもうまくいかなかったんですか?!」 「あぁ。まったく持って困った奴だ。せっかくの読書の時間が台無しだ。」 「は、はぁ」 この人は本当にマイペースな人だなぁ。この前も中庭で本を読んでいたとき、来客が来てウォル様にお会いしたいといってきたが、 「今は読書の時間だ。時間が終わるまで待っててもらってくれ。すぐに帰らなければならない方なら、帰ってもらってくれ」と。 私はその言葉を聴いて驚きはしましたが、ウォル様の性格を知っていたので、その言葉をそのまま来客の方にお伝えしたことがったな。 とにかく本当にこの人は人の意見をまったく聞かない人だ。それでも、この国を治められるんだから、それなりには信頼を受けている。いや、人望厚いお方なのだ。 「グロウ、何をしているんだ。さっさと着替えるぞ」 「あ、はい。ただいま」 まったくこの人はといいそうになったが、彼はぐっと我慢をしてその指示に従った。 ウォルはまったくもって、グロウが考えていることなど気にせず、着替え始めたのであった。
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