朝十時、十分前。
俺はすでに駅前にいた。
この時間だと駅前といえどあまり人は多くない。
そして五分ほどたった後に茜が来た。
微笑みながら小走りで俺の元へ駆け寄る。
「ごめんね。待った?」
「別に待ち合わせは十時だったし大丈夫だ。」
「じゃあどこ行こうか?」
行き先は茜が決めてくると思っていたのでまったく考えていなかった。
主体性が無いやつだな、と自分を非難する。
「俺はどこでもいいが、茜はどっか行きたい所はあるのか?」
「ん〜。じゃあついてきて。」
そういうと茜は商店街のほうへと向かう。
しばらく歩いて茜が立ち止まったのは占い屋。
「ここ。」
俺は正直に言って占いとかがあまり好きではない。
見えないものを信じろというのが俺の性分には合わない。
しかしどこでもいいといった矢先文句は言えないので了承する。
いかにもといった感じの紫のカーテンを潜り店内に入る。
中には一目で占い師とわかる人物が水晶玉の向こう側で待ち構えていた。
「相性占っていただけますか?」
「わかりました・・・そこにお座りください。」
言われた通りに椅子にすわると占い師は水晶玉の中心を凝視する。
数分と経たないうちに占い師は顔を上げこちらを向く。
そして口を開く。
「あなたたちの相性はかなり良いようですね。
しかし、試練の相も出ています。あなた方は近いうちに何らかの試練を迎えるでしょう。
ですがあなたたちなら乗り越えられます。
そして最後にあなた方に一言。相手を思いやるなら隠し事をしないことです。
以上が私が視た結果です。」
隠し事。俺には心当たりが有った。
徴兵のことをまだ茜に言っていないのだ。
「ありがとうございました。」
茜は見料とお礼を残し俺と共にそとにでた。
「試練か〜。大変な運命ね。でも相性は良いってよかったね。」
彼女は微笑みながら結果に満足した様子だった。
でも俺はあの言葉が気にかかっていた。
『相手を思いやるなら隠し事をしないことです。』
言うべきか。言わずに去るべきか。
「遼?どうしたの?」
考え事をしていたため俺の表情は沈んでいたようだ。
「いや。なんでもな・・・」
なんでもないわけ無い。
言わなければならない。
「いや。茜大切な話があるんだ。」
「・・・?」
彼女は怪訝そうな顔をして俺と向き合う。
「ちゃんと最後まで聞いてくれ。俺の・・・話を。」
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