Do you like you ・・・ ?
+梅雨明けの七色+
その日は珍しく晴れていた。
「・・・太陽の日差しは久しぶりだな。」
「そーだねえ〜」
小柄なピグミーと同じく小柄なはずのピグミーが大きく見える要因になっている小柄なケマリがいた。
今日は久しぶりに晴れ、ということなので日向ぼっこをしているようだった。
「だけど、この天気も長く続きそうも無いねえ」
そういってケマリは空をみた。
視線の先にはとびっきり大きな厚い雲があった。
ときどき光ってるところをみるとアレは雷雲のようだ。
「そうとう大きいな・・・梅雨明けか?」
リヴリー界では大きな雷雲が来た後その滝の様な雨が嘘のように晴れ、夏がやってくる。
もうずっと一ヶ月ほど雨が続いていたので、その可能性はかなり高かった。
「うん、多分梅雨明けだね〜」
そういって暢気にケマリは頷く。
そんな雑談をしている間に雲が近づいてきた。
久しぶりの日干しをしていた羽毛の島をヤシの実に替えた。
梅雨明けの雲は、強風・豪雨・落雷ととにかく物凄いのだ。
なのでヤシの実の葉っぱの下に隠れたところであんまり意味無いのだが、
今回は雨避けのために使うのではなく、掴まるために使うつもりだ。
目が眩むほどの閃光の直後、物凄い音が聞こえた。
まるでソレを合図するように豪雨と、強風が始まった。
紺月達はヤシの実の葉に掴まる。
が、ただでさえ体重が軽い上に力が無いケマリはすぐ飛ばされそうになった。
紺月はため息をつきながら身体を掴んだ。
「ったく・・世話の焼ける奴だな。」
「えへへ〜」
何が楽しいのかケマリは笑っていた。
どんどん風や雨は強くなった。
そしてその雲の半分ほどが過ぎた後、訪問者がきた。
「なっ・・!?」
こんな時に訪問者がくるとは思わなかった紺月は思わず声をあげた。
それはまだ小さなトビネだった。
どうやら生まれたばかりらしく、初期色のままだ。
そして案の定―――トビネは吹っ飛ばされた。
「ちッ・・・!」
紺月はケマリを放り出して(その間ケマリはちゃんと葉に掴まった)、トビネを掴んだ。
が、その時―――――物凄い強風が吹いた。
「・・っ!」
紺月は不安定な体制だったため、少し体が浮いた。
飛ばされる――――・・・
そう思った瞬間、逆の方向から風が吹いてきてその強風を相殺した。
とっさに、ケマリが風を起こしていたのだ。
/wind・・リヴリーが覚える技の一種であり、一瞬だけだが風を巻き起こすことができる。
だが普通とっさにできる行動ではない。
その風がぶつかり合って勢いが弱まった瞬間紺月は葉に掴まった。
「ふぅ〜・・・危なかったねえ」
その言葉と裏腹にケマリは楽しそうだった。
「その・・まあ、助かった。」
いつもより数倍小さい声で紺月は礼を言った。
だが付き合いの長いケマリは分かっているようだった。
「あ、あああありがとうございますです・・・」
一方トビネは紺月の腕の中で恐縮しまくっていた。
「んなことより・・お前、放浪者か?」
「あ、はい。」
「・・こんな天気で?」
普通リヴはこんな強風の中じゃ雷を落とされないように小さくなっている。
その中で放浪するなど、リヴリーの中で特に体格の大きい奴・・
マウンテンピグミーや、ジュラファントといった感じである。
その中で生まれたばっかりと思われるしかもリヴリーの中で
比較的小さなトビネが放浪していた、というのはおかしかった。
「ホラ、僕生まれたばっかりで・・レベル低いんです。」
「それでレベル上げを?」
「はい。飼い主様は反対したんですけど・・。」
「お、飼い主ちゃんといるんだな。」
「はい!とっても優しいんです」
そういうとトビネは幸せそうな表情をした。
「あの・・ピグミーさんやケマリさんには飼い主様もしかして・・」
一瞬ケマリは沈黙して、それからにっこりと笑った。
「うん。僕らにはいないよ〜」
トビネは分からなかったようだが、ピグミーには分かった。
ケマリの貌に過ぎった―――――影を。
実は二人が出会ったのは両方共飼い主に捨てられた後だった。
その頃ケマリは全然気持ちを表に出さなかったのを覚えている。
ただ、その瞳には、悲しみと哀れみ、そして絶望の色があった。
紺月はただ、そんな様子なケマリをほうっておけなくてたまに訪れていた。
そのうち彼は笑うようになった。
ケマリの過去になにがあったか。それは紺月は知らない。
だが過去に今更なにがあろうと、紺月はこの関係を崩さない確信を持っている。
簡単に崩れてしまうほどの脆い関係ではないはずだ。
ケマリが話そうと思えば話せばいいし、話したくなければ話さなければいい。
紺月は、そう思っていた。なので、軽く流した。
「にしても・・体ぼろぼろだな。」
紺月は言った。
よくみれば、トビネの体には傷が沢山あった。
「放浪してて、あんな感じで何回も吹き飛ばされたんです。
そのたびに木とかにぶつかってやっと止まったんですけど・・」
「戻れなくなったんだね?」
「はい。これまでで助けてくれたのはピグミーさん達だけです。」
「ふ〜ん・・」
少し純粋に強くなりたいという気持ちに、驚いた。
体がぼろぼろになってもその気持ちが揺らがなかったその強い意思。
にしても自分以外に助けてくれるリヴリーがいないらしかったのは心外だった。
まあ運が悪かっただけかもしれないが・・。
「ねえ紺月ちゃん。もうそろそろ雲通り過ぎるんじゃないかな?」
そういって雲を指した。
よくみたら雲の間から日差しが差し始めていた。
そういえばあれだけ鳴っていた雷も、激しかった雨も、やんでいる。
雲が通り過ぎるのはそんなに遅くはなかった。
鋭い日差しが三匹を迎え撃った。
それはあの暖かな春の日差しではなく、もう夏の日差しだった。
そして空には――――――――――――――
「紺月ちゃん、虹っ!」
激しい雨がやみ、そしてそこには七色の架け橋が架かっていた。
それは最後の最後に、春が届けてくれた贈り物に見えた。
そして、これから夏が始まる合図のようだった。
高い高い空に、蒼い空に、その橋は七色に輝いていた。
「ねえ、あそこにはほんとは何も無いんだよ。
でも、確かにそこには存在してる。
触れられなくったって、確かに在るモノはあるんだよ。
目を閉じたってボクにはあの虹が確かに存在してる。
すぐ消えちゃうけどね、ボク達の心の中には残ってるんだよ―――。」
そういってケマリは紺月を見て、そして虹を見て、目を閉じて風を感じた。
そしてとびっきりの笑顔で、言った。
「もう、夏だねえ」
その当たり前な言葉に、紺月もつられて笑った。
「そうだな。」
やがて虹は薄っすらと影を残して消えた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ やぁっと更新ダァー!(貴様殺されたいか?
今日和〜ぷにっつです。 更新遅れてごめんなさい;;いやあ色々忙しくて(言い訳しても虚しいだけだぞ? 今回は梅雨明けですね〜てか季節ずれまくりっすね。 これからは夏の小説(?)になりますよん♪ あとリクエストの“初期色のトビネ”を出させて頂きました。 前回の水色のスナイロユンクもリクエストでした。
これからもリヴリーのリクエスト等受け付けますんで、ご気軽にどうぞw
最近小説のコメントに 「この小説がきっかけで小説を読み始めました」 っていうのが来てました。 ほんまそんなことかいたら泣いちゃいますよ(待て
感想・リクエストもう大歓迎なんでバンバンしてください! あともう一回書いちゃったからもう一回書くのは迷惑かな〜と 思ってるアナタ(誰だ貴様)。全然かまいません。というより是非やってk(強制終了
でわでわ〜
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