茜色に染まったいつかの風景は
再び色づき動き始める。
+茜色の綿帽子+
今日は珍しく紺月はあのケマリの島にいなかった。
自分の島で意味もなくぼーっとしていた。
「紺月ちゃんっ」
とケマリがやってきた。
紺色のヒグミーはそっちを見る。
「あ〜・・・何?」
適当に返す。
「何じゃないよう。暇だったから。」
「・・・あっそう。」
しばらく二人はのんびりしていたが、紺月はある異変に気づいた。
「おい、お前何を頭につけてんだよ?」
「あ、やっと気づいた」
そういってケマリはにこにこ笑った。
ケマリの頭には、タンポポがついていた。
「・・・タンポポ?」
「うんっ」
楽しそうに言う。
「あのね、さっき放浪中に見つけたんだよ〜」
「ってお前放浪してたのかッ!?」
「うん。どうしたの〜?」
「・・・・・・いや、なんでもない。」
実は紺月とケマリは結構レベルの差がある。
そして紺月はその差を埋めようと密かに放浪とかがんばってたりするのだ。
といっても結局その放浪のときにコイツも一緒についてくるので結局のとこ全然埋まってないが。
「ね〜え、そのタンポポのあったとこに遊びに行かない?」
「・・・はあ。」
コイツは実は結構執着心が強いというかなんというか。
結構一回言い始めたらかえないトコがあるのだ。
長い付き合いでよくわかる。こういう場合は素直に従ったほうがいい。
どっちにしろ従わされてしまうのだから。
ケマリに紺月はついていった。
「此処だよ此処〜」
そういって来たのは春の草原。
「・・・いつの間にこんなとこ見つけたんだ?ここ放浪外だろ?」
「あはは〜すごいでしょ?」
「すごいっていうか・・・」
上手く誤魔化された。
「ま・・・いいか。」
そして春の草原を見渡す。
もうあの雪が降ったときの寒さはなく、暖かかった。
優しい風が体を撫でる。
芽吹き始めた新芽。つくしもところどころに見える。
そして一際目立ったのは―――タンポポだった。
色鮮やかだった。
黄色のタンポポ、白い綿になったタンポポ、新緑の新芽、茶色のつくし。
そしてその草原は限りなく続いていた。
「すごい色取り取りだね〜」
「確かに・・・すごいな。」
それから二人はしばらく遊んだ。
草原にはクローバーも育っていた。
そのクローバーで冠を作ったりした。
「あっ紺月ちゃん!四葉のクローバー!!」
「・・お前なあ・・・・」
子供のようにはしゃぐケマリを見てあきれる。
でもはしゃげるときにはしゃげるのは多分大切なことなのだ。
自分もあれぐらいはしゃげれたらな・・・と思いいつも素直になれず意地を張ってしまう自分を少し攻め、
同時に意地を張らずはしゃげるケマリを少しうらやましく思った。
そしてもう日は傾き始めていた。
「ん・・・もうこんな時間か。」
「あ〜ほんとだあ。夕日が綺麗だねえ」
空気が澄んでいる草原ではいつも以上に夕日は美しく見えた。
色取り取りだった花や草も、茜色に染まっていた。
そして少し強めの風が吹いた。
その風は草原をなびかせ、そして同時にタンポポの種を吹き飛ばした。
茜色の綿帽子が、空をふわりと舞う。
「これがまた来年、芽吹くんだね〜」
「そうだな・・・」
紺月はまぶしそうにソレを見ていた。
やがて種は飛ぶことをやめ、地面に落ちた。
「つかの間、だね」
「ああ。まあまた来年見れるだろ」
「でも今一瞬の風景はもうずっと見れないんだよ」
「まあ確かにな・・でも」
「ん〜?」
「その一瞬、もう返ってこない風景だからこそ綺麗だと思えるんだろ?」
「・・・確かにね」
そしてしばらく、二匹は茜色に染まった風景を目に焼き付けるように見続けた。
今返ってこない時間を、もう見れないかもしれないこの風景を、ずっと見続けていた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 早くも春の小説第四弾です^^*
とりあえず春のネタはコレぐらいかな(おい) 次は・・・梅雨ぐらいが多分くると思いますよ(予測不可能ですが。) なんか最後の方、詩っぽいなあ(死) ケマリの名前候補が大分集まってきましたねえ。 感激ですよほんとに・・全部一文字一文字丁寧に読んでいます。 これからもどんどん名前候補と感想・リクエスト等しちゃってください! 小説更新もがんばりますw
でわでわ〜
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